年齢不相応の若々しさは危険信号

 実年齢より若く見られると、誰でもうれしい。だが、それも程度もの。年齢不相応の若々しさは、むしろバランスを失った状態であり、不健康の表れと漢方では見なされる。たとえば、還暦を過ぎたのに、シワやたるみが少なく、髪は染めてもいないのに黒々とし、いつも元気いっぱいに飛び回っている。美容整形をしているわけでもないのに、見た目はせいぜい50歳くらいにしか見えない…。そうした人たちは“アンチエイジングな人”の見本のように思えるが、「実はこのタイプの人は知らないうちに心臓病や糖尿病、がんなどの病気が進行していることがあり、ひとたび患うと症状が重くなりやすいのです」と丁氏。これはどういうことなのだろうか?

 漢方では、体質を大きく「虚証」(きょしょう)、「中庸」(ちゅうよう)、「実証」(じっしょう)に分類する(表1)。虚証は体力がなく、無理の利かない体質。一方、実証は元気で体力があり、睡眠不足でもばりばり仕事をこなす。そして中庸はその中間で、最もバランスが取れた、病気をしにくい状態だ。

 「虚証も実証もバランスの崩れた状態であり、その偏りが大きくなるほど病気になりやすいといえます。特に、実証は体力があるので知らず知らずのうちに無理を重ね、ある日突然、病に倒れてしまうことがあります。病気に対する反応も強いので、症状が激しく出て、大病になりやすい傾向も。見た目が実年齢より10歳も若いような人は、この実証タイプがほとんどなのです」と丁氏は説明する。

 あまりに老けて見られるのも問題だが、若すぎるのも良くないというわけだ。「例えば、歴代の総理大臣を振り返っても、髪が黒々として、若々しくエネルギッシュに動き回っていた人は、突然、心臓や脳卒中などの病で倒れることが少なくありません。一方、年とともに筋肉も脂肪も徐々に落ち、髪も白くなり、枯れるように年を取っていった人は、大病もせず、元気で長生きをしていることが多い。故・三木武夫さんや村山富市さんらはその典型ですね」(丁氏)。

 そこでセルフチェック。実年齢と見た目年齢にどれだけギャップがあるか、職場や飲み会などで「何歳に見える?」と周囲の人に聞いてみよう。その回答の判定法を丁氏はこんなふうに教えてくれた。「年齢相応に見られたら、安心してください。もし5歳若く見られたら、喜んでください。しかし、仮に10歳も若く見られたら、喜んでいる場合ではありません。一度、漢方の専門医に診てもらうことをお勧めします」(丁氏)。

丁宗鐵(てい むねてつ)さん
日本薬科大学 教授
丁宗鐵(てい むねてつ)さん 1947年、東京都生まれ。横浜市立大学医学部大学院修了。医学博士。米国スローン・ケタリング癌研究所客員研究員、北里研究所東洋医学総合研究所研究部門長、東京大学大学院医学系研究科生体防御機能学講座客員助教授、東京女子医科大学特任教授などを経て、百済診療所(東京都中央区)を開設。日本薬科大学教授も務める。『その生き方だとがんになる』(新潮文庫)など著書多数。


丁宗鐵(てい むねてつ)さん
日本薬科大学 教授
丁宗鐵(てい むねてつ)さん 1947年、東京都生まれ。横浜市立大学医学部大学院修了。医学博士。米国スローン・ケタリング癌研究所客員研究員、北里研究所東洋医学総合研究所研究部門長、東京大学大学院医学系研究科生体防御機能学講座客員助教授、東京女子医科大学特任教授などを経て、百済診療所(東京都中央区)を開設。日本薬科大学教授も務める。『その生き方だとがんになる』(新潮文庫)など著書多数。

この記事は日経Gooday 2014年11月27日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。

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