もはや革命!? 不健康なはずのラーメンが進化
ブンブン ブラウ カフェ ウィズ ビーハイヴ(東京・旗の台)
国内外を問わず、多くの人に愛されているラーメン。今や国民食の一つと言っても過言ではないだろう。しかし、広く受け入れられ、その味が評価されているにもかかわらず、ラーメンには“不健康”なイメージがある。そんなラーメンがここ数年で変わりつつある。素材にこだわる店が増え、「健康に配慮した」ラーメンを出す店が増えているのだ。それに伴い“ラーメン女子”と呼ばれる女性客も急増中。そこで日経Goodayでは、健康志向ラーメンの最新トレンドをいち早く取り上げ、東京で今話題のラーメンを提供している店を1軒ずつ紹介していく。
今や国民食の一つになったラーメン。美味しいだけでなく「健康に配慮した」ラーメンが増えている(写真は、ブンブン ブラウ カフェ ウィズ ビーハイヴの「アグー豚の醤油ラーメン(全部乗せ)」
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日本人が好きな食べ物というと、ランキングの上位に必ず入る「ラーメン」。日本人は麺好きが多いが、その中でもラーメンに惚れ込んでいる「ラーメン好き」は非常に多い。人気店には行列が絶えず、有名店ならば1時間以上待つ店もある。
ミシュランで「一つ星」を獲得したラーメンも
今では、世界的なグルメガイドブック「ミシュランガイド」にもラーメン店が掲載されるようになっている。2014年12月発行の「ミシュランガイド東京2015」からは、コストパフォーマンスに優れた店を紹介する「ビブグルマン」というジャンルで、20軒以上のラーメン店が掲載された。そして、昨年12月発行の「ミシュランガイド東京2016」では、とうとう「一つ星」を獲得したラーメン店が登場した。
「ミシュランガイド東京2016」(日本ミシュランタイヤ発行)。2015年版以降、「ビブグルマン」というジャンルでラーメン店が掲載されるようになった。2016年版では、「一つ星」を獲得したラーメン店が登場(写真:スタジオキャスパー)
独自の進化を続けるラーメンが、ニューヨークやパリなどの海外にも続々と進出して、現地のグルメに受け入れられているのをご存じの方も多いだろう。
ラーメンが広く受け入れられ、評価が高まる一方で、ラーメンには「カラダに悪い」という負のイメージがいまだに付きまとっている。「ラーメンばっかりじゃカラダによくない」「飲みの〆のラーメンはカラダに悪い」「スープは全部飲んじゃダメ」――多くの人がそんなフレーズを必ず1度は聞いたことがあるのではないだろうか。
確かに、一昔前までは、油ギトギトでカロリーが高く、スープには塩分を多く含んでいて、それでいて野菜はほとんど入っていない――そんなラーメンが多かった。だから、ラーメン好きというと男性ばかりで、敬遠する女性も少なくなかった。ラーメン店は「女性が入りにくい店」の典型例だった。
ラーメン女子、急増中
しかし、ここ数年でラーメンが大きく変わりつつある。素材にこだわり、「健康に配慮した」ラーメンを出す店が増えているのだ。
鰹節や昆布、鶏、豚、醤油、塩、小麦などの素材にこだわるのはもちろん、そこから一歩進化した「健康志向ラーメン」が続々と登場している。例えば、スピルリナやチアシードといった話題のスーパーフードを取り入れた一杯や、野菜を練り込んだ見た目にもカラフルな麺を使う店など、「カラダに配慮した」ラーメンが誕生している。麺やスープ、トッピングに野菜をふんだんに使ったベジタブルラーメン(ベジソバなどと呼ぶ)を扱う店も増えている。「薬膳」「イタリアン」「低カロリー」など、これまでラーメンとは縁のなかったものがラーメンと同居する時代になっている。
「ミシュランガイド東京2016」に掲載されたラーメン店
●一つ星 |
蔦(豊島区) |
●ビブグルマン |
青葉(中野区)、維新(品川区)、伊藤(北区)、金色不如帰(渋谷区)、しながわ(豊島区)、ソラノイロ(千代田区)、多賀野(品川区)、トイ・ボックス(荒川区)、ドゥエ イタリアン(千代田区)、びぎ屋(目黒区)、ブンブン ブラウ カフェ(品川区)、むぎとオリーブ(中央区)、やまぐち(新宿区)など27軒 |
※場所の表記はミシュランに準拠
それに伴い、“ラーメン女子”と呼ばれる女性客も急増中だ。今では、日時によっては「女性客が8割」にも達する店が登場するまでになった。女性誌でも、オシャレなレストランを紹介する記事と並んで、ラーメン特集が組まれている。「女性客8割」「女性誌でラーメン」――ひと昔前では考えられない状況になっている。
そこで日経Goodayでは、健康志向ラーメンの最新トレンドを紹介する。東京で今話題のラーメンを提供している店を5軒紹介していく。
女性が好きな「健康志向ラーメン」というと、「カラダに優しいかもしれないけど、味は物足らないのでは…」などと思う人もいるかもしれない。しかし、それば間違いだ。今の健康志向ラーメンは、「おいしい!」のが大きなポイントとなっている。素材にこだわって作られたラーメンは、昔からのラーメン好きでも満足できる品質。実際、今回紹介する5軒のうち3軒は「ミシュランガイド」にも掲載されており、その味を世界が認めている。もちろん他の2軒も負けず劣らずの実力派だ。
では、「カラダに配慮した」「美味しい」ラーメンの最前線を紹介していこう。
◇ ◇ ◇
「週に一度は、身体に良くて美味しいものを!」
入り口に張られたポスター。「週に一度は、身体に良くて美味しいものを!」をテーマにラーメンを提供している
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最初に紹介するのは、東京・品川区の旗の台駅からすぐのビルの2階に店を構える「ブンブン ブラウ カフェ ウィズ ビーハイヴ(BumBunBlauCafe with BeeHive)」。「カラダに良くて美味しい」をテーマに掲げた店で、2014年夏のオープンからわずか半年にして、「ミシュランガイド東京 2015」のビブグルマンに掲載された。
店内奥にはカウンター席もあり、男女問わず一人でも訪れやすい。女性専用の本格リラクゼーション・フェイシャルマッサージが受けられるエステサロンも併設する
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「週に一度は、身体に良くて美味しいものを!」というラーメン店らしからぬポスターを見ながら店内に入ると、カフェのような空間が広がっている。そのオシャレな店内では、ラーメンを食べている人が半分、かき氷を食べている人が半分という不思議な光景が広がっている。
店内奥のカウンターの中では、小柄な女性店主・鈴木瑞穂氏が真剣な面持ちでラーメンを作っている。鈴木氏は、実はエステティシャン歴10年のエステのベテラン。店の奥には、リンパマッサージやエステが受けられる個室もある。
九十九里での衝撃の出会い
鈴木氏は、かつて千葉・九十九里にあったラーメン店を訪れた際、これまで食べたことがないラーメンに出会った。
「私は昔からラーメンが大好きだったのですが、どこか心の片隅に罪悪感を持ちながら食べていました。しかし、九十九里で食べた一杯に衝撃を受けたのです。カラダに悪いと思っていたラーメンが、素材や調味料にこだわることで、こんなにも美味しく、カラダにやさしい一杯になるんだと。そのラーメンの味わいに感動しました」
店主の鈴木瑞穂氏は、エステティシャンとラーメンの料理人という二つの顔を持つ。厨房での麺の湯切りなどもお手のもの
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「(美容の世界では)美しさは、1回だけエステを受けただけではずっと保つことはできません。美しさをキープするには、“続けられるもの”でなくてはいけません。食べ物も同じです。その時だけカラダにいいものを食べるだけでは、美しく、健康にはなれません。『ラーメンのような手軽でリーズナブルに食べられる料理を食べて、きれいになれたらどんなにいいだろう』と思ったのです」
当時、「エステを“食”として一歩進めたい」と考えていた鈴木氏は、すぐにその店で修業を開始。5年間にわたる研鑽を積み、ブンブン ブラウ カフェを2014年に旗の台で開業した。
スピルリナ配合の自家製麺
「アグー豚の醤油ラーメン(全部乗せ)」(1200円)。チャーシューは、アグー豚、イベリコ豚、鶏肉の3種類がのり、贅沢感も食べ応えもある。名古屋コーチンの味玉子とバジル入りのワンタンも入る。麺は150g
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一番人気の「アグー豚の醤油ラーメン」(800円)は、一見“普通”の美味しそうなラーメンだが、随所に健康や美容への配慮がされている。
ほんのりとグリーンがかった麺は、国産小麦100%にかん水を数種ブレンドし、スーパーフード「スピルリナ」のパウダーを練り込んだもの。スピルリナは藻の一種で、食物繊維、たんぱく質、β-カロテン、鉄・カルシウムなどのミネラルなどを多く含んでいる、今話題になっている食品の一つだ。麺は自家製で、店内の奥にある製麺所で毎日作られている。製法にもこだわった細麺は、カラダにいいのはもちろん、風味、のどごしもいい。
麺は自家製。麺にはスーパーフード「スピルリナ」の粉末(右側)が練り込んである
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タレは、弓削多醤油の吟醸純生しょうゆをメインにした2種の生醤油をベースに、数種の乾物と共に火入れして作っている。醤油の風味が高く、旨味がたっぷりなのが特徴。スープは、添加物を与えていない青森大鰐シャモロックの丸鶏をメインに煮込んで作っており、化学調味料は一切使用していない。
スープを口に入れると、味わい濃厚ながらも、澄み切ったクリアな醤油の味が口いっぱいに広がる。つい「もう一口」とレンゲが止まらない。もちろん麺との相性も抜群だ。
一般的なラーメンは丼一杯で30~40ccの油が使用されるが、ブンブン ブラウ カフェでは、カラダに配慮してオレイン酸たっぷりの香味油を15ccに減らしている。それでいて、ラーメンらしい“満足感”もしっかりとあるから嬉しい限りだ。
ラーメンのトッピングには、メンマではなく「アサイー」の新芽が使われている。これも話題のスーパーフードだ
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トッピングの具材にもこだわっている。全部乗せには、ローストしたアグー豚やイベリコ豚のコンフィ、真空低温調理した鶏胸肉のチャーシューがのっている(800円の醤油ラーメンは豚と鶏が1枚ずつ)。メンマの代わりに、アサイー(ブラジル原産のスーパーフルーツ)の新芽を使っている。これにクレソンとネギが載る。全部乗せに含まれる味玉子は、名古屋コーチンの玉子を使用している。全部乗せにはバジル入りのワンタンも入っている。
透明なスープが美しい「アグー豚の塩ラーメン」もダシの風味をストレートに感じる逸品だ。もし2人以上で店を訪れるなら、塩と醤油を両方頼んで味を比べるのも楽しい。
ラーメンにトリュフを使用した「白トリュフ塩ラーメン」(850円)も人気がある。三つ星フレンチでも使用するオリーブオイルに、アルバ産の白トリュフで作った自家製のトリュフオイルを使用するこだわりぶりだ。
なぜ女性客が多い? それはかき氷も美味しいから!
ブンブン ブラウ カフェは、女性客や男女カップル、家族連れがとても多く、男性の一人客が他店に比べて少ない。オシャレな内装、それに住宅街である旗の台という場所柄もあるだろうが、その理由は別なところにある。
かき氷「グッドバイタリティ」900円。自家製ケフィアのバニラヨーグルトとミックスベリーをトッピング。ハイビスカスやニワトコの実、オレンジピールなどが入った健康や美容に効果が期待できるハーブティーをソースに使用している
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それは同店が提供するかき氷が、とても美味しいためだ。自家製ミルクやサボテンの糖蜜、いちごエスプーマソースなどを使ったスタンダードに加えて、季節によってさまざまなかき氷を提供している。かき氷目当てでくる女性客も多い。小さい子どもの頭くらいありそうなかき氷を、女性1人が何杯も注文する光景も珍しくない。
カラダにいいラーメンと、さまざまなバリエーションがあるかき氷――このダブルの魅力にはまって来店を繰り返すリピーターも多い。妊婦が訪れ、その後、子どもが食事をできるようになったら一緒に来店するといった微笑ましい光景もこの店ならではだ。
写真/福本和洋(MAETTICO)
ブンブン ブラウ カフェ ウィズ ビーハイヴ
【住所】東京都品川区旗の台3-12-3 J-BOXビル2F
【電話】03-6426-8848
【営業時間】12:00~15:00、18:00~LO22:30(日曜・祝日12:00~16:00)
【定休日】水曜日
【ホームページ】http://www.bumbunblaucafe.com/
この記事は日経Gooday 2016年3月4日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。
この記事はシリーズ「「一に健康、二に仕事」 from 日経Gooday」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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