<b>笹月 静さん</b>。国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究部部長。国立がんセンターがん予防・検診研究センター予防研究部化学予防研究室長などを経て現職。「日本人のがんの要因に関するエビデンス整理と評価」、コホート研究などを手がける
笹月 静さん。国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究部部長。国立がんセンターがん予防・検診研究センター予防研究部化学予防研究室長などを経て現職。「日本人のがんの要因に関するエビデンス整理と評価」、コホート研究などを手がける
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 「コホート」とは、年齢や居住地など一定の条件を満たす特定の集団のことです。現在、岩手県、長野県、東京都、沖縄県、大阪府、高知県など全国の一般住民14万人を対象に研究が行われています。余談ですが、「コホート(cohort)」の語源は古代ローマの歩兵隊で、300~600人ほどの兵隊の群を意味します。

 最初に対象者に主に対面でアンケート用紙を配布し、健診に参加する方の場合は血液試料や健診データについても提供していただきます。さらに5年後、10年後、というふうにアンケート調査を行っていきます。その中で、がんにかかる方、糖尿病にかかる方などが出てくるので、それらの病気と生活の関連をみていく研究です。扱う内容は、食事内容はもちろん、喫煙や飲酒、体格、運動、さらに睡眠やストレスといった社会心理学的要因など、多岐にわたります。

 お酒が好きな人、喫煙者、熱心に運動をする人などが混在する一般住民の大集団を対象に、まっさらの状態からスタートし、10年、20年と追跡していくわけです。

時間も手間もかかりそうな調査ですね。

笹月さん だからこそ研究結果の信頼性が高まると考えています。

 私達の研究グループは、国内で行われている研究を基に、日本人のがんと生活習慣との因果関係の評価を行っています。同様の研究は国際的な研究機関でも行われていますが、欧米人と日本人は体格も違うし、食べているものも違うために、海外の研究が主体の評価基準をそのまま日本人に当てはめて考えるのは難しい面があります。日本人を対象とした研究に限定して、がんとの因果関係を評価し、がんを予防する手立てをお伝えすることが重要と考えています。

 国立がん研究センターのコホート研究は、10年、20年という追跡期間を経て、2000年代から続々と結果がまとまってきました。その研究を含めて、科学専門誌などに掲載されたがんの研究結果から、評価の対象になる方法(コホート研究と症例対照研究)で実施された論文をピックアップして、それぞれについて科学的根拠や信頼性なども併せて評価しています。

 その評価の結果を、全体および個々の部位について、国立がん研究センターのホームページで公開しています。

国立がん研究センターの「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究のエビデンス評価」の一部。コーヒーの評価は図下側の飲料の欄にある(<a href="http://epi.ncc.go.jp/cgi-bin/cms/public/index.cgi/nccepi/can_prev/outcome/index" target="_blank">国立がん研究センターのホームページ</a>より一部抜粋)
国立がん研究センターの「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究のエビデンス評価」の一部。コーヒーの評価は図下側の飲料の欄にある(国立がん研究センターのホームページより一部抜粋)
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