仕事においては、やはりカラダが資本。多忙な中でも最高のパフォーマンスを発揮し続けるには、日ごろからの健康管理が欠かせない。一流人が実践する健康マネジメント術を紹介する本企画、今回は3回にわたってお届けしてきたジャパネットたかた前社長・髙田明さんインタビューの最終回。実は『ギネス世界記録』の男性長寿記録を塗り替えるのが夢だと髙田さんは明かしてくれた。
「1年以内に、スコア90を切ってみせましょう」──。昨年の暮れ、ある懇談会の席で私はこう宣言しました。もちろん、ゴルフの話です。その時点での私のスコアは平均すると140くらいですから、かなり無謀なことを言ったとは思っています。1年半前から会社のエレベーターには一切乗らず、積極的に歩くようになったものの、1日中スタジオにこもる日も多く、なかなか思うように歩けないのが悩みの種。日ごろ歩き足りない分を解消すべく、“真面目”にゴルフを始めることにしました。
2013年8月、大村湾カントリー倶楽部(長崎県大村市)でのプレー。このころは、まだ平均スコア140程度。
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メンタル面を鍛えれば100は切れる?
ゴルフは以前からやっています。最初にコースを回ったのは20年近く前でしょうか。とはいえ、ずっと年に3、4回、お付き合いでプレーする程度にすぎなかった。練習などしないで、ゴルフ場に行って打つだけ。だから全くと言っていいほど上達しなかったのです。
この年齢になって今さらながら「ちょっと損をしたな。どうしてゴルフを真剣にやらなかったのだろう」と思いました。どんなことでも目標を定めることは大切です。そこで「1年以内に90を切る」と宣言した。本気でゴルフに取り組む状況に自分で自分を追い込んだわけです。
「えっ、そんな無茶なって? ははは、まあそう言わないでくださいよ」
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それからあちこちで吹聴しています。先日、あるラジオパーソナリティーの方とこの話になり、もし私が本当に90を切るという奇跡を起こしたら特別番組を企画してくれることにもなったのですよ。
90切りのため、まずは本を読むことから始めました。プロゴルファーの倉本昌弘さんが書いた、ずばり『90を切る!』というタイトルの本のほか、偶然いただいたラリー・ネルソン氏の本を読んでいます。テクニックどうこうというより、メンタル面をいかに鍛えるかといった内容の本です。
私はメンタルを強化しさえすれば100は切れると思っています。実際、本を読んだ後、コースに出たら110で回れた。みんなびっくりしていましたよ。この調子でいけば100くらいすぐに切れると自分では思っているのです。まあやってみないと、分かりませんけどね。
ギネス世界記録を塗り替えるには、あと50年は健康でいないと
今でも私はテレビ通販番組に話し手として登場しているものの、今年1月に社長からは退いています。これまで約30年間、仕事一辺倒で、趣味らしい趣味はありませんでした。これから仕事以外の楽しみとしてゴルフにいそしみたいなと思います。
こう決めたのは、「私はあと50年、健康に生きなければならない」からでもあります。実は、『ギネス世界記録』に認定された男性の世界最高齢記録116歳を目標にしているんです。そうした気持ちを持っていればこそ100歳まで生きられると思うんですね。
どうですか、私はあと50年生きられそうな気がしますか。そう聞くと最初の頃、社員は「はい、そうですね」と言ってくれていたのですが、最近はどうも返事をしてくれない。また夢みたいなことを言ってと思っているのか、今の勢いで本当にそうなったらどうしようと思っているのか(笑)。
社長退任とときを同じくして、「A and Live」という新しい会社を設立しました。「A」は明で、「Live」は生きるだから、「明はまだ生きている」という意味にとらえることもできます。この会社名の通り、まだまだこれからやりますよ。
「足腰が弱くなったら杖をついて出演してもらい、その杖をテレビ通販番組で売ればいい」。息子である現社長には、そう言われました(笑)
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取材を終えて
髙田さんは2012年末に「過去最高益を更新できなければ、社長を辞めます」と宣言し、周囲を驚かせた。
当時、ジャパネットたかたは厳しい状況にあった。創業以来、右肩上がりの成長を続けてきたものの、2011年、12年は2期連続の減収減益に沈む。主力商品であるテレビの販売不振が大きく響いたからだ。
「社長、辞めます」という髙田さんの宣言が社員たちの闘志に火を付け、無茶とも思えた目標を無事達成している。
このように実現可能性が極めて低いと思えることでもかなえてきた髙田さんだからこそ、今回もひょっとしたらひょっとするのではという期待感がわく。
昨年7月に開催されたあるパーティーの席上で、髙田さんの長男で現在ジャパネットたかたの社長を務める旭人さんはこう発言し、参加者の笑いを誘った。
「僕は社長にずっとテレビに出てほしい。もし足腰が弱くなったら杖をついて出演してもらい、その杖をテレビ通販番組で売ればいい」
テレビカメラを通して日本中に元気を振りまく髙田さん。世界最高齢の話し手。ご本人は「テレビ通販番組に出演するのはあと1年程度」と話してはいるが、こちらもひょっとしたらひょっとするのかもしれない。(荻)
了
(まとめ:荻島央江=フリーライター/インタビュー写真: 菅 敏一)
髙田 明(たかた あきら)さん
ジャパネットたかた前社長、A and Live 社長

1948年、長崎県生まれ。大阪経済大学卒業後、機械製造会社勤務を経て、74年から父親が経営するカメラ店で働く。86年に独立し、カメラ販売の「たかた」を設立。ラジオ通販で手応えをつかみ、通販事業にシフト。94年からテレビ通販にも進出し、事業を大きく伸ばす。99年に現社名に変更。2015年1月に社長を退き、長男の髙田旭人氏が2代目社長に就任した。
この記事は日経Gooday 2015年8月7日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。
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