仕事やプライベートの時間をやりくりするために、真っ先に削ってしまうのが「睡眠」ではないだろうか。また、年齢とともに、眠りが浅くなったり、目覚めが悪くなったりする人も多いに違いない。もう眠りで悩まないための、ぐっすり睡眠術をお届けしよう。

不眠症は大きく2つに分けられる。一つはストレスや生活習慣の乱れから起こるもの、もう一つは病気が原因となっているものだ。
「あまり知られていませんが、不眠を引き起こす原因に“他の病気”の存在があります。それに気付かず、安易に睡眠薬やお酒でごまかしていると、どんどん病気が進行する危険もあるのです。まず、不眠の背景に他の病気が潜んでいないかチェックすることが必要です」と、もりしたクリニック(東京都品川区)の森下克也院長は注意する。
商談中に突然眠りに落ちる「ナルコプレシー」
では、どんな病気があるのか、主だったものを見てみよう。
よく聞く「睡眠時無呼吸症候群」は文字通り睡眠中に呼吸が止まってしまう病気。2003年に山陽新幹線の運転士が居眠り事故を起こし、広く知られるようになった。「10秒以上の無呼吸が1時間に5回以上、または一晩に30回以上」と定義されている。
呼吸が止まっても苦しくなれば自然と再開するが、その度に肉体にかかるストレスは相当なもの。当然、睡眠も浅くなる。
「原因はのどの奥の筋肉がゆるみ、睡眠中に気道を塞いでしまうこと。中高年になると起こりやすくなります」と森下院長。睡眠時無呼吸症候群は生活習慣病のリスクも高くする。虎の門病院(東京都港区)睡眠センターが751人の患者を調べた結果、63.8%が高血圧、51.1%が脂質異常症、17.7%が糖尿病を合併していた。
次は、「睡眠相後退症候群」(すいみんそうこうたいしょうこうぐん)という病気。ひと言でいえば「遅寝遅起き」で、夜はなかなか寝付けず、朝はなかなか起きられない。単に生活リズムが普通の人とずれているだけの話だが、どうしても遅刻が直らないなど、社会生活に支障を来たす場合は病気とみなされる。
朝起きられないのは、夜の布団に入る時刻が遅いから、と思われがちだ。しかしこの病気の人は体内時計がずれているため、強引に早起きしても深夜になるまで眠くならないという。光照射療法や薬物療法によって、少しずつ睡眠のリズムを修正していく必要がある。
珍しいのは、「ナルコレプシー」という病気だ。大事な商談の途中など、あり得ないような場面で突然眠りに落ちてしまい、周囲の人たちを驚かせる。夜中に金縛りにあうことも多い。日本では500人に1人の割合でいるという。「オレキシンという脳内の神経伝達物質が足りないことで起こる先天的な病気。薬物療法で改善するので、必ず病院に行ってください」と森下院長は話す。
Powered by リゾーム?