ほかの人がいない場所を設ける

 部下を叱ったら、そのあとも引きずらず「根に持たない」こと。ミスをいつまでも覚えていて、ことあるごとに責めたり、懐疑的な態度を取ったりすれば、部下は信頼されていないと感じてしまいます。また、「周りに配慮して、個別に伝える」ことも大切です。同僚や後輩のいる場で叱ると、貝のように口を閉ざしてしまったり、歯向かってきたりすることが多いものです。叱るときは会議室などほかの人がいない場を設けるようにしましょう。

落ち着いて話すためにグリーン車を活用するのも一手

 私がかつて、外資系企業に勤務していた当時はとても多忙で、部下とのコミュニケーションもとりづらい状態でした。そのような背景もあり、部下を叱るときに限らず、落ち着いて話をしたいときには、出張時の新幹線のグリーン車を利用していました。観光客や家族連れなどもいる普通車ではなかなか仕事の話をする雰囲気にはなりませんが、グリーン車ではある程度の緊張感があって、腹を割った話もしやすいもの。日本企業では経費管理が厳しく、グリーン車の利用はなかなか難しいかもしれませんが、例えば、東京と新大阪間なら料金の差額は1人5000円程度です。その間に有意義な話ができれば、私は決して高い金額ではないと思います。

 時には、そうした話しやすい雰囲気や場を設定することも有効ではないでしょうか。

【まとめ】

  • 叱るときは「かりてきたねこ」を意識する
  • 主語は「私」にして話す
  • できている点を褒めたり認めたりしたうえで叱る
  • 叱る場は個別に設定する

(まとめ:田村 知子=フリーランスエディター)

渡部 卓(わたなべ たかし)さん
帝京平成大学現代ライフ学部教授、ライフバランスマネジメント研究所代表、産業カウンセラー、エグゼクティブ・コーチ
渡部卓(わたなべ たかし)さん 1979年早稲田大学卒業後、モービル石油に入社。その後、米コーネル大学で人事組織論を学び、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBAを取得。90年日本ペプシコ社入社後に米国本社勤務を経て、AOL、シスコシステムズ、ネットエイジでの幹部を経験し、2003年ライフバランスマネジメント社を設立。以来、職場のメンタルヘルス対策、ワークライフコーチングの第一人者として、講演、企業研修、教育分野、マスコミでの実績は海外も含めて多数に上る。著書に『折れない心をつくる シンプルな習慣』(日本経済新聞出版社)、『明日に疲れを持ち越さないプロフェッショナルの仕事術』(インプレス)、『金融機関管理職のためのイマドキ部下の育て方』(近代セールス社)などがある。
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