日頃の感謝の気持ちを5つ書き出す

 ではここで、簡単なエクササイズをしてみましょう。あなたが日頃、感謝していることを、5つ書き出してみてください。漠然としていて難しいときは、「職場で」、「今いる周囲3メートル以内で」など、範囲を限っても構いません。

 さて、どんなことが書き出されたでしょうか。

 企業研修などでこのワークショップをやってみると、5つすべてをパッと書き出せる人は意外と少ないのです。そこで、書き出せたことを何人かのグループで話し合ってもらうと、「それは自分では思いつかなかったが、確かに感謝すべきだ」というふうに、周りの「感謝」の内容に共感できることがたくさん出てきます。

 例えば、家族に対する感謝を書き出す人もいれば、いつも歌を聴いて勇気づけられているアーティストへの感謝を書き出す人もいます。私はといえば、階段を上るたびに、「階段を上れている自分自身」に感謝する習慣があります。これはもともと、私の恩師である早稲田大学名誉教授の加藤諦三先生との会話の中で伺ったことで、「階段を上れる健康な自分がいること自体に感謝している」との話に「なるほど」と思って以来、自分でも階段を上る際には自分への感謝の念を持つようになりました。

 この5つの感謝を書き出す「感謝リスト」を、時々でもいいので日記のように綴る習慣をつけていくと、セルフエフィカシーが高まっていきます。米国の心理学者ロバート・エモンズ氏らの研究(*2)によると、感謝したいことを5件思い浮かべて毎週書き記す作業を9週間続けたところ、悩み事を5件書き記すグループよりも主観的な幸福感が上がっていたそうです。

 この連載コラムでは、不安を手放すための「コラム法」(「抱え込みがちな仕事や不安を上手に手放すには?」参照)や、後ろ向きに考えてしまう癖を直すための、ABCDE理論を応用した「メンタフダイアリー」(「物事を後ろ向きに考えてしまう癖を直したい」 参照)を紹介していますが、書き出したり、日記を綴ったりする習慣は、ネガティブな思考の癖を改善することだけでなく、ポジティブな思考を高めることにも活用できるのです。

*2  Emmons RA, et al. Journal of Personality and Social Psychology. 2003;84(2):377-389.

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