そもそも、私たちの体には「サーカディアンリズム(概日リズム)」といって、地球の自転に連動した周期が備わっている。この仕組みをコントロールしているのが体内時計だ。体内時計の周期は、個人差はあるものの、1日24時間よりも多少長めにできている。そのズレを毎日修正しないと、少しずつ寝る時間と起きる時間が遅れてしまい、夜型生活になってしまいやすくなる。そんな困った事態を防いでくれているのが、ブルーライトを多く含む太陽光なのだ。

 また、目から入った光は、睡眠にかかわるホルモンの分泌にも影響を与える。体内時計の中枢である視交叉上核に入った光の信号は、神経を通して「松果体」(しょうかたい)へ到達する。この松果体では、眠気を促すメラトニンというホルモンが作られているが、光の信号を感知すると、その分泌に抑制がかかる。つまり、眠気が減って、体が覚醒するわけだ(1ページの図参照)。

日の出の赤い光では覚醒しにくい

赤みのなくなった朝日は覚醒効果が高い。(©Melanie Taylor/123RF.com)
赤みのなくなった朝日は覚醒効果が高い。(©Melanie Taylor/123RF.com)

 晴れた日の午前の太陽光は、2万~10万ルクスある。曇り空でも1万ルクス以上、雨の日でさえも5000ルクス以上ある。一般的な家庭のリビングで使われる照明の照度が150~500ルクス程度だというから、日中の太陽光がいかに強力かが分かるだろう。「この強烈な光を浴びると体内時計がリセットされてズレが修正される。また、引きずっていた眠気も取れて、しっかりと覚醒します」と古賀教授。

 ただし、これは太陽が昇ってからの話。実は、日の出のころの赤い朝日にはこれだけの目覚まし効果は望めないのだそうだ。「朝日は赤色が強く、ブルーライトは少ないため、覚醒効果がそれほど高くない。むしろ、浴びて気持ちいいという心理的効果の方が大きい」と古賀教授。だからこそ、薄暗い冬の朝には、LED照明のブルーライトが一役買うわけだ。

 家を出るころは、もう日が昇っているだろう。通勤時には、できるだけ太陽光を浴びるようにしたい。外を歩くときはもちろん、乗り物の窓越しにでも構わない。「目覚めてからトータルで20分ほど光を浴びると、職場に着いたころにはしっかり活動モードに切り替わり、スムーズに仕事に入っていけます」(古賀教授)。

 

 反対に、避けたいのは、朝の電車内での居眠りだという。「せっかく目覚めつつある体がまた眠気モードに戻り、体内時計の周期がおかしくなってしまいます。朝から居眠りしなくても済むよう、夜にしっかり眠っておくことが基本です」と古賀教授はアドバイスする。

次ページ 情報機器の液晶画面を見るのは寝る2時間前