仕事やプライベートの時間をやりくりするために、真っ先に削ってしまうのが「睡眠」ではないだろうか。また、年齢とともに、眠りが浅くなったり、目覚めが悪くなったりする人も多いに違いない。もう眠りで悩まないための、ぐっすり睡眠術をお届けしよう。
午後イチの眠気対策に昼寝を積極的に活用しよう。(©racorn-123rf)
昼食後は眠気に襲われて、仕事がはかどらないという人は多いだろう。ビジネスパーソンを悩ます、午後イチの眠気対策に効果的なのが「昼寝」だ。今回は昼寝を最大限に活用する、とっておきの裏技を紹介しよう。
広島大学大学院総合科学研究科行動科学講座の林光緒教授は、次のような興味深い実験を行った。
昼寝前のコーヒーで目覚めスッキリ
大学生10人に「昼寝なし」「昼寝あり」「昼寝+目覚めた直後の洗顔」「昼寝+目覚めた直後の高照度の光照射」「コーヒー摂取+昼寝」という5条件を体験してもらい、それぞれについて昼寝後の眠気がどの程度だったかを自己評価してもらった。昼寝をした長さはいずれも15分間だった。その結果、起きた後の眠気が総じて最も少なかったのが「コーヒー摂取+昼寝」の条件であることが分かった(下図)。
コーヒーを飲んでから昼寝をすると、起きた後の眠気が総じて最も少なくなる
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広島大学の林光緒教授が、大学生10人を対象に行った実験の結果。「昼寝なし」「昼寝あり」「昼寝+昼寝後の洗顔」「昼寝+昼寝後の高照度光照射」「カフェイン(コーヒー)摂取+昼寝」という5条件を体験し、昼寝から目覚めた後の主観的眠気を比較した。その結果、事前にコーヒーを飲んでから昼寝をした条件で、起きた後の眠気が総じて最も少なくなることが分かった。(出典:Clinical Neurophysiology 114. 2268-2278.2003、改変)
「コーヒーに含まれるカフェインは15~30分で大半が血液中に吸収されるため、起きるころにカフェインが効きはじめて、スッキリと目覚められます。与えられた課題を解くテストでも、コーヒーを摂取してしばらく経った後が一番成績が良かった。眠気が減り、作業効率も上がるのです。もちろん、コーヒーに限らず、カフェインが入っているものなら紅茶でも緑茶でも何でも構いません」と林教授。
30分以上の昼寝はかえって仕事効率を下げる
ただし、昼寝で気を付けておきたいのは、寝過ぎないことだ。30分以上眠ると脳を休める深い睡眠に入ってしまうので、目覚めた後、眠気を引きずることになり、かえって仕事のパフォーマンスが低下する。また、体内時計のリズムが狂って夜の寝つきが悪くなったり、睡眠が浅くなったりする悪影響も出てくる。「働き盛りの人の場合は、長くてもせいぜい15分程度の“ちょい寝”がちょうどいい」と林教授。ただし、これは昼間に一時的に生じる眠気を減らすためのものであり、日ごろの睡眠不足を補うことにはつながらないそうだ。
ちなみに、高齢者の場合は30分まで寝ても大丈夫だという。30分以下の昼寝習慣を持つ高齢者は、そうでない高齢者に比べ、アルツハイマー型認知症の発症リスクが5分の1だったという報告もある。
では、うまい具合に“ちょい寝”で切り上げるにはどうしたらいいか。林教授は、「横になって寝てはダメ」とアドバイスする。「横になると、つい気持ちよくなって起きられなくなり、睡眠がどんどん深くなる。壁や背もたれに頭をつけて椅子に座ったまま寝るとか、デスクにうつぶせになって寝るなど、あえて眠りにくい姿勢で寝るのがコツです」。
「15分で起きる」と暗示してから寝る
また、「タイミングよく、15分で起きられるだろうか」と自信のない人もいるかもしれない。そんな人にぜひ試してほしいのは、「自己覚醒法」だ。「やり方は至って簡単。『15分経ったら起きるぞ』と思ってから寝る、それだけいいのです。ただし、あまり強く念じすぎるとストレスになって眠れなくなるので、“思う”程度で十分。『ちょっとやってみよう』ぐらいの気持ちで始めるといいでしょう」(林教授)。
この自己覚醒法のメリットは、アラームなどで強制的に起こされるのと違って目覚めが良く、起床後に眠気を引きずらないことだ。「詳しいメカニズムは分かっていませんが、何時に起きようと思っておくだけで、目覚める前から体が起きる準備をしてくれるのです。私たちの研究では、昼寝の場合、起きようと思う時間の3分ほど前から、心拍数や血圧が徐々に上がるなど、覚醒度が高まってくることが確認されています。目覚めたときの覚醒水準が高いので、頭もスッキリし、その後のパフォーマンスも上がります」と林教授。時計も見ていないのに、その時間に合わせて起きる準備をしてくれるとは、なんともすごい体の仕組みではないか!
自己覚醒法は初めから思った通りにできなくても、何度かトライしているうちにできるようになる人が多いという。不安なら、携帯のアラーム機能を“保険”で使うのもいいだろう。起きたい時間の1分後にセットしておき、アラームが鳴る前に自然に目が覚めるようになったら上出来。もちろん、朝の起床時にも取り入れられる方法だ。お試しあれ。
この記事は日経Gooday 2014年12月15日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。
この記事はシリーズ「「一に健康、二に仕事」 from 日経Gooday」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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