「芋焼酎」「泡盛」で血栓を溶解する物質が倍増!?

 「血栓は血液中の血小板が凝集してできたものですが、そこに『フィブリン』と呼ばれる繊維状のタンパク質を引き寄せるために、強固な血液の塊になっていきます。正常な体(血管と血液)であれば、血栓の溶解に関わる酵素『t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)』や『ウロキナーゼ』といった物質が血管内皮細胞から分泌されて、血漿(しょう)中に含まれる『プラスミノーゲン』という酵素に働きかけて、活性型の『プラスミン』というタンパク質分解酵素を作り出します。これが血栓を大きくしていく『フィブリン』を分解し、血栓を溶解していきます(図参照)」(須見教授)

血管内皮細胞から分泌される「t-PA」「ウロキナーゼ」といった物質は、タンパク質分解酵素「プラスミン」の前駆体である、血漿(しょう)中「プラスミノーゲン」に働きかける。プラスミンは、血栓を大きくする元の「フィブリン」を溶解する。
血管内皮細胞から分泌される「t-PA」「ウロキナーゼ」といった物質は、タンパク質分解酵素「プラスミン」の前駆体である、血漿(しょう)中「プラスミノーゲン」に働きかける。プラスミンは、血栓を大きくする元の「フィブリン」を溶解する。
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 お酒とひと口に言っても、ビール、日本酒、ワインなど、さまざまなタイプがある。「実は焼酎と泡盛にt-PAやウロキナーゼの分泌、活性を促す効果があることが実験でわかりました。『酒を飲まない人』と『本格焼酎』『泡盛』を飲んだ人で比べると、t-PAやウロキナーゼの活性は、実に倍近くになっていました」(須見教授)。

 ここで言うところの焼酎とは、「甲類(ホワイトリカー)」や「甲乙混和焼酎」ではなく、「乙類」といわれる、単式蒸留器で蒸留した昔ながらの本格焼酎を指す。芋、麦、米など、多くの種類の本格焼酎があるが、中でも須見教授が薦めるのは芋焼酎、そして泡盛である。

一般成人を対象にしたコントロール(24人)に対し、泡盛(15人)または焼酎(19人)を飲んでもらい、その後の「t-PA」の活性を測定した。その結果、コントロールに対して、焼酎、泡盛のいずれもで、t-PAが有意に増加していることが分かった。(醸協、109(3)、137-146、2014)
一般成人を対象にしたコントロール(24人)に対し、泡盛(15人)または焼酎(19人)を飲んでもらい、その後の「t-PA」の活性を測定した。その結果、コントロールに対して、焼酎、泡盛のいずれもで、t-PAが有意に増加していることが分かった。(醸協、109(3)、137-146、2014)
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 「24種類の焼酎で実験した結果、芋焼酎と泡盛の一部にt-PA、ウロキナーゼの分泌、活性を高めることが分かりました。残念ながら芋焼酎や泡盛に含まれるどの成分が、2つの物質の活性を促すのかは、まだ特定されていません。現在のところt-PA、ウロキナーゼはいずれも詳しい産生や分泌のメカニズムが分かっていません。ですが、2つの活性を促すのに最適だとされる量は、純アルコールに換算して1日に30ml程度であることが分かっています」(須見教授)

 本格焼酎で言えば、120ml程度。左党にとっては、「そんな殺生な」とうめきが漏れるような量かもしれないが、何事も“適量”が肝心というわけだ。「健康効果を高める観点からいえば、ほんの少しお酒を飲み、ほろ酔いになるくらいがちょうどいい」と須見教授。いくら芋焼酎が良いからと言って、たくさん飲むほど血栓ができにくくなるというほど、左党にとって都合のいいことにはならないらしい。

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