薬の代謝に関わる酵素を鍛えると酒に強くなる

 「アセトアルデヒド脱水素酵素は、アルコール代謝を繰り返すうちにその活性が徐々に高まっていきます。さらにもう一つ、アルコール代謝を担うチトクロームP450(以下、CYP3A4)という酵素も、同じく活性が上がります」(浅部先生)。

 CYP3A4は主に、薬物の代謝を行っており、肝臓に多く存在する。CYP3A4の活性が上がると、酒の量が増えても不調が表れにくくなるだけではでなく、酒を飲むと顔がすぐ赤くなる人は赤くなりにくくなる。残念ながら、CYP3A4の活性を数値化して確かめることはできないが、以前よりも酒に強くなった実感があれば、CYP3A4のおかげかもしれない。

 ただし、酒を飲まない生活が続くと、どちらの酵素も活性が下がってしまい、少量の酒でも酔っぱらってしまう。“強くなる可能性があるタイプ”の浅部先生は、アセトアルデヒド脱水素酵素もCYP3A4も十分に活性が高まっている状態で、試しに1カ月酒を飲まずにいたところ、禁酒明けにてきめんに酒に弱くなっていた経験があるという。

 「アセトアルデヒド脱水素酵素の活性は個人差が大きく、無理に“鍛えよう”などと思ってはいけない」と浅部先生は忠告する。また、「アルコール依存症に陥りやすいのは全体の50%に当たる『酒豪』ではなく、45%の『強くなる可能性があるタイプ』」だという。日々飲み続けていると、「自分は酒に強い」と勘違いしてしまいがち。次第に酒量が増え、最悪の場合、アルコール依存症になってしまう。ここまでいくと、酒に強くなるどころか、専門家の手助けが必要となる。

 酒に強くなっても、病気になってしまっては意味がない。無理をせず、その日の自分の体調と相談しながら、二日酔いにならない程度の酒量を守ること。これこそが細く、長く、酒飲みライフを楽しむコツである。

CYP3A4を鍛えると薬の効きが悪くなることがある!?

 酒の強さを左右するCYP3A4だが、活性化させることによるデメリットがあることを忘れてはならない。

 CYP3A4の活性が上がると、有効成分の代謝スピードが変わってしまい、本来期待される効果が表れなくなることがある。

 効果が下がってしまうものはCYP3A4で代謝される、降圧剤のカルシウム拮抗薬(アダラートなど)、ベンゾジアゼピン系睡眠薬(ハルシオンなど)のほか、血栓予防薬のワーファリン、高コレステロール血症治療薬のスタチンなどだ。定期的にこれらの薬を飲んでいる人はくれぐれも注意が必要だ。

浅部 伸一(あさべ しんいち)さん
自治医科大学附属さいたま医療センター消化器科講師
浅部 伸一(あさべ しんいち)さん 1990年、東京大学医学部卒業後、東京大学附属病院、虎の門病院消化器科等に勤務。国立がんセンター研究所で主に肝炎ウイルス研究に従事し、自治医科大学勤務を経て、アメリカ・サンディエゴのスクリプス研究所に肝炎免疫研究のため留学。帰国後、2010年より自治医科大学附属さいたま医療センター消化器科に勤務する。専門は肝臓病学、ウイルス学。好きな飲料は、ワイン、日本酒、ビール。

この記事は日経Gooday 2015年1月22日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。