いくら酒を飲んでも酔わない人もいれば、たったビール1杯でひどく酔っぱらう人もいる。酒に弱い人は、「体質だから」とあきらめてしまうしかないのか? 「鍛えれば酒に強くなる」の真相に迫る。

「酒は鍛えれば飲めるようになる」
そんな迷信めいたことを、学生時代に諸先輩方から言われ、半ば無理やりに酒に付き合わされた経験がある方も多いのではないだろうか。筆者はその言葉の通り、飲み会の回数をこなすうちに飲めるようになったくちだが、一方で毎回、飲酒に伴う不快を繰り返すだけで全く強くならない人もいる。
このように、酒に強い人・弱い人は何で決まるのか、肝臓専門医で自治医科大学附属さいたま医療センター消化器科の浅部伸一先生に話をうかがってみた。
遺伝によって決まる酒の強さ
酒に強くなれるかどうかはズバリ、遺伝子によって決められているという。「酒を飲んだ際に不快な症状を起こす犯人は、アルコールを分解した時にできるアセトアルデヒドです。このアセトアルデヒドを分解する役割を担うのが『アルデヒド脱水素酵素』ですが、その活性は、遺伝子の組み合わせによって決まっています。“強い遺伝子”を2本持っている人はアセトアルデヒドを速やかに分解できる酒に強いタイプ。“弱い遺伝子”が2本ある人は、アセトアルデヒドがどんどん蓄積していく酒に弱いタイプ」(浅部先生)。
遺伝から見れば酒に強くなるのか、弱いままなのかはシンプルだ。酒に強い両親のもとに産まれた子どもは「ざる」と呼ばれる酒豪に、逆に両親ともに酒が弱い場合は下戸(げこ)となる。
「強くなるかどうかの割合は人種によって違っていて、白人や黒人はほぼ100%が酒豪になれる遺伝子の組み合わせです。日本人を含む黄色人種では、酒豪が50%、下戸が5%、そして残りが強くなれる可能性があるタイプです」と浅部先生は続ける。
面白いことに、「“強い遺伝子”と“弱い遺伝子”をそれぞれ持つ人は、ほどほどに飲めそうな感じがしますが、初めは限りなく下戸に近い状態。しかし、飲酒の機会が増えることで、強さが増していくタイプです」(浅部先生)。“強い遺伝子”を持っているにもかかわらず、「自分は飲めないタイプだ」と勘違いしている人も少なくないのだという。
(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターの樋口進先生が考案したパッチテスト)
参考までに、遺伝子の組み合わせについて簡単に調べる方法を紹介しよう。用意するのは絆創膏と消毒用アルコール(70%)の2つ。
(1)絆創膏のガーゼに消毒用アルコールを2~3滴染み込ませる。
(2)1.の絆創膏を二の腕の内側に貼り、7分間そのままにしておく。
(3)絆創膏を剥がし、5秒以内にガーゼが当たっていた部分の肌の色をチェックする。
(4)さらに10分後、もう一度肌の色をチェックする。
3でも4でもガーゼが当たっていた皮膚の色が変わっていない人は“強い遺伝子”を2つ持つ酒豪タイプ。3の時点で赤くなっている人は下戸タイプ。3では変化は見られないが、4で赤くなっていた人は強くなれるタイプと判断できるのだそうだ。
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