恐らく、初めて耳にする人も多いと思われる「多目的コホート研究」。この研究によって科学的に裏付けのあるエビデンスが得られることで、日本人に適した生活習慣、健康維持に必要な要素が明らかになっていくのだ。例えば、飲酒の習慣を調査する項目では、飲酒の「頻度」「酒別」「量」について、5年ごとに同じ形式の質問に調査参加者たちが回答する。こうして14万人の追跡調査によって、飲酒と疾患発症との関連が明らかになってきた。

飲酒と糖尿病罹患に関する統計リスク
40歳~59歳の男女各1万5000人を10年間に渡って追跡した調査結果。男性の場合、1回当たりの飲酒量が日本酒換算で1合を超えると糖尿病の罹患リスクが高かった。対して女性の場合は、むしろリスクが低くかった。(Waki.K.et al.Diabet Med.;2005.22:323-331)
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 「例えば、左党の皆さんが気にしている『糖尿病』でいうと、飲酒機会が『週1日未満の人』のリスクを1とした場合、男性では1回当たりの酒量が『1合未満』、『1~2合』『2合以上』と増えるほど、リスクがやはり上がります(上グラフ参照)」(津金先生)

 …やっぱり。

週300gの純エタノール量からリスクが上がる

 一方、国民の三大疾病とも呼ばれる「心疾患」「脳疾患」「がん」についてはどうだろうか?

 「酒を飲まない人の発症リスクを1として比べると、虚血性心疾患については、面白いことに飲酒量が増えるほどリスクが1を下回っています。対して、全脳卒中では、週当たり300gを超える総エタノール量を摂取すると発症リスクは上がっていきます。適量の飲酒であれば、血管系イベント全体で見れば発症リスクは高くないと言えます(下グラフ参照)」(津金先生)

飲酒量と循環器疾患発症に関する統計リスク
40~69歳の男性1万9000人を10年間追跡した調査。「酒を飲まない」をリスク1として比較した場合、「全脳卒中」では1週間当たりの純アルコール摂取量が300gを超えるとリスクが高かった。対して「虚血性心疾患」に関してはリスクが低かった。(Ikehara S.et al.Alcohol Clin Exp Res.;2009.33(6)1025-1032)
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 「これは朗報!」とガッツポーズをしたいところだが、喜ぶのはまだ早い。