「自分の個性」に突き抜ける時代

田坂「個性に突き抜ける」という段階がやってきます。

「個性に突き抜ける」…ですか?

田坂:そうです。一流のプロフェッショナルなど、優れた師匠と出会い、その師匠から「技術」や「心得」、さらには「人格」を学んでいくと、当初は、その学んでいる「技術」「心得」「人格」が前に出ますので、師匠に「似てくる」のですが、いずれ、師匠から学んだ「人格」が、自分の他の「人格」と影響を与え合い、ときに融合し、自分らしい個性的な「人格」になっていきます。

 例えば、先ほどの「営業プロフェッショナル」の例で言えば、「明るい人格」だけで仕事をしていた営業担当者が、師匠から「細やかな人格」の大切さを学び、その「人格」を学んでいくと、当初は、師匠から学んだ「細やかな人格」が前に出るため、「師匠に似てくる」ということが起こりますが、そのうち、本来持っていた「明るい人格」と影響を与え合い、融合することによって、「自分らしい個性的な人格」に突き抜けていきます。

なるほど…。それが「個性に突き抜ける」という意味ですか…。

田坂:そうです。子供の成長のプロセスにおいては、「個性」とは、「枠に嵌(は)めないで、自由に思考し、行動させる」ことによって育つと、しばしば言われますが、プロフェッショナルの成長のプロセスにおいては、「個性」とは、「強大な個性」との格闘を通じて磨き出されていくものなのです。

 そして、その「強大な個性」とは、「優れた師匠」の示す「強烈な人格」という形で目の前に立ち塞がることも多いのです。

「本当の個性」とは、そうやって磨き出されていくものだと…?

田坂:そうです。実際、世の中で活躍している一流の個性的なプロフェッショナルに聞くと、分野を問わず、若い時代に、「強大な個性」「強烈な人格」の師匠との精神的な格闘を経験しています。

 多くのプロフェッショナルが、過去を回想し、「あの師匠は、強烈だったな」「あの師匠には、大きな影響を受けたな」という言葉を、懐かしそうに、ときに感謝の思いを込めて、語りますね。

 世の中で語られる「枠に嵌めないで、自由に思考し、行動させる」という教育法で育つのは、子供時代や青少年時代の「個性」であり、一流のプロフェッショナルの「磨き出された個性」は、そうした教育法だけでは、決して育たないのですね。

なるほど、師匠に「似てくる」という段階を、そういう視点で捉えることが必要なのですね。

 たしかに、世の中を見渡すと、「強大な個性」や「強烈な人格」を持った「カリスマ的な師匠」の下から、優れた人材が、何人も生まれていることも事実ですね…。

 さて、ここまで、「深層人格」を開花させる第一の技法として、「優れたプロフェッショナルを『師匠』として、その『師匠』から『人格』を学ぶ」という技法について教えて頂きましたが、では、 第二の技法とは、どのような技法でしょうか?

田坂:それでは、次回、その第二の技法について語りましょう。

 その要諦は、「仕事の選び方」です。

仕事の選び方…ですか。それは興味ありますね(笑)。