誰もが持っている「リーダーシップ人格」

田坂:実は、私自身、高校ぐらいまでは、自分の中に隠れている「リーダーシップ人格」に気がついていなかったからです。
 高校ぐらいまでは、私自身、自分のことをリーダーが務まる人間だとは思っていませんでした。

それが、なぜ…。実社会に出られてからは、先生は、マネジメントや経営の道を歩んで来られましたね。まさに、「リーダーシップ」の道を…。

 何が転機で、先生の中の「リーダーシップ人格」が表に出てこられたのですか?

田坂:先ほども申し上げましたが、最初のきっかけは、大学時代に、学生自治会の活動に取り組んだからでしょうね。いや、当初は、「取り組んだ」というよりも、「巻き込まれた」と言った方が良いでしょう。

 そして、結局、「自治会委員長」の役割を担うことになったのです。しかし、その立場が、私の中に隠れていた「リーダーシップ人格」を引き出したのですね。

 世の中では、しばしば、「立場が人を育てる」と言われますが、ある意味で、「立場が人格を引き出す」ということも、真実なのです。

「立場が人格を引き出す」ですか…。

田坂:そうですね。例えば、優れた経営者の方で、若い頃から、役職が上がるにつれ、次々と人格が変わってきた方は珍しくないですね。いわゆる「出世魚」と呼ばれる方です。

 課長になったら、課長らしい人格になり、部長になったら部長らしく、役員になったら役員、専務になったら専務、社長になったら、見事に社長らしい人格が表に出てくる人物のことです。

なるほど、「出世魚」ですか…。たしかに、大企業の経営者などで、周りからそう評される方はいますね…。

 ただ、そこまで、高度なレベルでなくとも、「リーダーシップ人格」というものが、誰の中にも隠れているということ、それが、置かれた立場によって引き出されるということは、理解できるような気がします。

 ところで、そうした「人格」の中で、「営業プロフェッショナル人格」や「企画プロフェッショナル人格」といったものがあるのですか?

田坂:あります。例えば、営業のプロフェッショナルとして修業をしていると、自然に、最も営業力を発揮できる「人格のモード」があるのですね。それを、私は、「営業プロフェッショナル人格」と呼んでいます。

 私自身、すでに述べたように、大学院を終えて民間企業に就職し、営業職に就いたわけですが、それまでの「研究者人格」から「営業プロフェッショナル人格」への切り替えを、行わざるを得なかったわけです。

その「営業プロフェッショナル人格」は、どのようにして身につけられたのですか? やはり、優れたプロフェッショナルを「師匠」として学ばれたのでしょうか?

田坂:その通りです。その「人格」は、職場の上司を「師匠」として学んだのですね。

 実は、私が新入社員として最初に仕えた上司は、幸いなことに、「営業の達人」とでも呼ぶべき人だったのですが、朝から晩まで、この上司と行動を共にしながらその言動を見ていると、どの場面で、どのような人格で処すべきかが分かってくるのです。そして、自然に、自分の中のそうした人格が引き出されてくるのです。

「人格」が「引き出されてくる」のですか…?