立場が引き出す「リーダーシップ人格」

田坂:例えば、強力なリーダーが突然いなくなった状況において、それまで、その強力なリーダーの下で影が薄かったナンバー2が、不思議なほど、リーダーシップを発揮して、その組織を牽引するという事例は、決して珍しくありません。

 これは、何が起こったのかと言えば、強力なリーダーがいなくなった緊急事態において、ナンバー2の中から、「もう頼れる上司はいない」「自分が決めるしかない」という自覚とともに、「リーダーシップ人格」が引き出されてきたのです。

 逆に言えば、このナンバー2の心の中の、「この上司についていけば」「自分が決めなくても」という依存心が、彼の中の「リーダーシップ人格」の開花を妨げていたのです。
 そして、それが、彼の「影が薄かった」理由でもあるのです。

すなわち、このナンバー2に、「リーダーシップ人格」が無かったわけではなく、状況と立場が、彼の中の「リーダーシップ人格」の開花を抑えていたのですね…。

田坂:そうです。だから、大企業などにおいては、経営トップが、「僕がいては、次が育たんだろう」と言って勇退する例などがあるのですね。

 そして、こうした「リーダーシップ人格」の開花は、決して、仕事の世界だけではありません。

 それまで、頼り甲斐のある夫の陰で、控えめな妻として家庭内に収まっていた女性が、突如、その夫が他界するなどの状況変化の中で、彼女の中の「リーダーシップ人格」が表に出てきて、夫の代わりに働きに出て、家計を支え、子供を養い、立派な社会人に育てるといった例も、決して珍しくないですね。

たしかに、「頼れる誰か」がいるかぎり、我々の中の「リーダーシップ人格」は開花しませんね…。

田坂:そうですね。このように、「リーダーシップ人格」は、実は、誰もが持っていながら開花せずに終わっている人格であり、誰でも、ある状況や立場に置かれると、自然に開花する人格でもあるのです。

 しかし、多くの人は、「自分はリーダーには向いていない」といった自己限定によって、この「リーダーシップ人格」を開花させずに終わっているのです。

どうして、先生は、そのことを強く確信されるのでしょうか?