今ネット上には数え切れないほどの英語のニュースサイトや動画サイトがあり、その中には無料の英語学習サイトまであります。中でも、最近特に注目を浴びているのがスカイプを使ったオンライン英会話です。
オンライン英会話の中にはネイティブの先生による授業を提供しているものもありますが、そのほとんどはフィリピンを拠点としており、フィリピン人講師によって行われています。
受講する側(つまり生徒)は、大きくは2つのグループに分けることができます。1つは、英語圏に住んだ経験があって英語をかなり流暢に話す人が、帰国後にそのレベルを維持しようとして利用するケース。もう1つは、国内で勉強している人が会話能力を身に付けたいと考えて利用するケースです。国内で英語を学んでいる人は、ほぼ確実にスピーキングが苦手ですので、そのほとんどは超初心者、もしくは初心者だと考えて良いでしょう。
オンライン英会話の利点
オンライン英会話の利点は、何といってもマンツーマンで安価に会話の練習ができることです。これまでにも、少人数の授業を行う英会話学校はありましたが、マンツーマンと少人数ではゼロと1ほどの違いがあります。マンツーマンでは100%自分が話さないといけないので、緊張感やリアルに会話しているという感覚がまるで違うからです。
私も大学の授業でオンライン英会話を導入していますが、普段の授業でいろいろと工夫をしてもあまり反応しない生徒が、オンライン英会話になると別人のように取り組みだすというケースがよくあります。「Say that again?」など、相手の会話をコントロールする表現をメモして用意しておくようにアドバイスすると、つぎの授業ではよく使う表現を自分で調べ、ノートに書いて来たりもします。
講師を柔軟に変えることができるのも大きな魅力です。なぜなら、講師と学習者の間にはやはり相性(chemistry)というものがあるからです。リアルのマンツーマンであると、そう簡単には講師を変えることができなかったり、気を使ったりもしますが、ネットを介したレッスンであると、比較的気軽に講師を変えることができます。
費用も魅力的です。国内ではマンツーマンのレッスンはとても高価ですが、オンライン英会話だとは25分あたり500~600円程度と、5分の1ぐらいの費用で学ぶことができます。
ネイティブでなくても効果はある
このようにいろいろな魅力のあるオンライン英会話ですが、弱点や問題点が無い訳ではありません。その1つに、講師の英語のレベルがあります。フィリピン人講師の英語を聞くと、相当英語に慣れていない人でない限り、流暢そのものにしか聞こえません。しかし、実際にはレベルや質にかなりの違いがあります。
宣伝では「英語のネイティブによるレッスン」と書いてあるケースや、何気にサイトにブロンドの女性や男性の写真を載せるなどして、さもネイティブの授業っぽい演出をしているところもありますが、実際にはネイティブスピーカーに引けをとらない英語を話す講師はごくわずかです。
この点だけを見て、オンライン英会話の利用に疑問を投げかける人もいますが、私自身は肯定的に見ています。1つには、どうのこうのと言っても、彼らは平均的な日本人と比べるとはるかに流暢に英語が話せるからです(※)。
(※)中には本当に酷い英語の人もいますが、それは流石に私たちでも分かりますので、次回から別の講師に変えれば済むことです。
私たちのもっとも重要な課題は、無理やりにでも口を動かし、「とにかく英語で意思を疎通させる」ことですので、相手の英語が少々不正確でも特に問題はありません。間違った英語を学んでしまうと心配する人がいるかも知れないですが、逆に、正しい英語を話す人とレッスンをしたとしても、それで正確な英語を話せるようになるという保証はどこにもありません。まずは、質より量です。
またそもそも英語は、もはや本当の意味での世界語になっていて、例えば東南アジアで仕事をしたり、旅行をしたりする場合には、相手の話す英語にはなまりがあるのが普通です。さほど正確とも言えない英語を話すケースも多々あります。
加えて言うと、英語の講師や会話の相手がノンネイティブであると、こちらもかなり気楽に話すことができます。これも「少々不正確な英語」で構わない大きな理由です。
私自身は、英語がこのような形で崩れていくのは残念なことだと思っているのですが、今ではネイティブスピーカーよりはるかに多くの人が「ノンネイティブ英語」でコミュニケートしていますので、ある程度割り切ることも大切です。そもそも、国内だけで勉強して、流麗で正確な英語を話すことが出来るようになるかというと、その可能性はそれほど高くはありません(※)。
(※)国内だけで学ぶ場合には、明らかに限界があります。この点をしっかりと理解しておかないと、「妄想の世界」に生き続けることになり、どこにも行きつけない(get nowhere)、もしくは挫折する(give up)ということになります。
フリーカンバセーションの罠を避ける
オンライン英会話で注意しないといけない点はもう1つあります。それは、マンツーマンで話せるとなると、私たちはいわゆるフリーカンバセーション、つまり自由に話すレッスンを望む傾向が強いのですが、これだけを考えているとすぐに壁に突き当たります。なぜなら、決して自分が想像しているようには話せないからです。
子どもと違って、大人の場合は話したいこと、話せること、つまり様々な知識や考え、意見をたくさん持っています。ですから、つい英語でもそれらについて話そうとしてしまうのです。
ここにあるギャップは、とても大きな障害になるので要注意です。
では、どうすればこの問題を解決できるのでしょうか。もっとも簡単な方法は、やはりテキストを使用することです。テキストといっても、もちろん、どのようなものでも良いというわけにはいきません。大切な点は、自分がやる気になるような内容であるという点と、「意味」が確実に分かるように工夫されているという点です。
もっとも手っ取り早いのは、興味のある英文で、意味がすべて分かっているものをこちらから相手に送り、それを使ってQ&Aをし合うという方法です。いきなり英語でQ&Aをするのがハードルの高い人は、あらかじめ自分用にQ&Aを用意して少し練習しておくと高い効果を期待できます。
きちんとしたテキストを使うと、講師の使う英語も正確になりますし、またそうでない場合でも、正しい英語と比較することが出来ますので一石二鳥と言えるでしょう。
その際に、グーグル翻訳など何らかの翻訳ソフトを立ち上げておくと、さらに自在な会話が楽しめます。「英語を英語で」という学習方法が合っている人もいるかも知れませんが、リアルタイムで言いたいことを英語に翻訳し、それを自分で口に出して使うという方法も楽しいですし、良いトレーニングになります(※)。
(※)グーグル翻訳の場合、英文を入力すると合成音声で読み上げてくれるので、音声のついていない英文でも使うことができます。これはかなり便利です。打ち込む日本語によっては、一回で正確な英語に翻訳されない場合もありますが、そんなときには、「Do you understand?」などと聴きながら、相手が分かるまで何度もトライすると中身の濃い練習ができます。
講師の見極め方
もう一点チェックしておきたい点として、当たり前のことですが、講師にもうまい講師とそうではない講師がいます。今はオンライン英会話も競争が激しいため、研修などをかなり行っているようですが、それでもやはり限界があります。講師にも適性というものがありますし、今のように講師の需要が多いとどうしても質は下がりがちです。
ではどのようにして講師を見極めれば良いのでしょうか。
そのもっとも簡単な方法は、自分の「心」に聞くことです。「頭」で考えてはいけません。英会話となると私たちはどうしても緊張しがちで、自分のレベルが低いとか、自分の努力が足りない、と考えがちですが、その発想を180度変え、とにかく「気持ち良く受講できる講師」を選べば良いのです。
先ほど触れたように、私たちにとって大切なのは質よりもとにかく量です。気持ち良く話せる講師なら、当然ながら話す量は増えます。
具体的に、あまり良いとは言えない講師の例を上げると、例えば、誤りを正すのが講師の役目だと思い込んでいる人がそうです。そのような講師は、学習者が何かミスをするとすかさず「あなたは今間違えました」と指摘し、さらには文法について講釈を始めたりします。しかし、このような教え方はもはや時代錯誤で、学習者は伸びるどころか委縮してしまいます。
ではどのような訂正方法が適切かというと、例えばあなたが「Yesterday I go to Kyoto.」と言ったとすると、それに対して「Oh, you went to Kyoto yesterday?」と返してくれる方法です。この方法であると、学習者はごく自然なやり取りの中で、「go」ではなく「went」と言うべきだったということを(ほぼ無意識のうちに)理解することができます(※)。
(※)その際に、講師が(嫌味の出ない程度に)ややゆっくりめに話してくれればパーフェクトです。これができる講師はプロといって良いでしょう。
「リアル」との違い
「『リアル』との違い」と言われてもピンと来ない人もいるかもしれません。そもそも、ここでいう「リアル」とはいったい何なのでしょう。オンライン英会話ではリアルタイムで、相手の顔を見ながら話しますので、十分に「リアル」なのではないでしょうか。
いいえ、そうではありません。
本当の「リアル」とは、例えば英語圏に留学して日々実際の生活の中で英語を使うケースです。このような体験と比べると、オンライン英会話には著しい限界があります。なぜかというと、人間はつねに五感をフルに使って言葉を学んでいるからです。
例えば、ファーストフード店で「Having it here?(ここで食べますか)」と言われて、「No, I' ll take it out.(いいえ、持ち帰ります)」と返答するようなごく単純なケースでも、脳は、言葉だけでなく、店内の雑音、人の気配、食べ物の匂いなど様々な情報を関連付けてインプットしています。このような情報の関連付けがあって、初めて言葉は本当の意味で身に付き、自在に使えるようになるのです。
この点をよく理解しておかないと、「過剰な期待→失望」という流れになってしまいます。
会話力、特に日常会話力というのは、そう簡単に身に付くものではありません。しかし、1つひとつの小さな成功をポジティブにとらえ、現実的にアプローチするようにすると、そこには必ず「結構話せる自分」がいます。ぜひこの点を理解して、前向きに学習に取り組むようにして下さい。
英語に関する限り、私たちの能力は30%程度しか引き出されていません。これはとても残念なことです。このコラムでは、どうすれば残りの70%の能力を発揮できるかについて、日本語を活用するという手法を中心にさまざまな観点からお話ししていきます。
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