ごく単純に考えてみましょう。

 英会話にあこがれを持つ人がたくさんいるということは、それだけ「話せない人が多い」ということです。そして、これはイコール、適切で効果的な「外国語学習法」についてよく理解できていない人が多いということです。このような状態で、スピーキングを拙速に教えようとすると、大きく脱線する可能性があります(※)

(※)第二言語習得について詳しい人もいるにはいますが、モニター仮説や手続き的記憶など「学問」(座学)として理解できているだけのケースが多く、しかも知識がすでに古く、まさしく化石化(fossilize)しています。今はディープラーニング(コネクショニズム)の時代に突入しており、新しいパラダイムの枠組みの中で知識を整理していく必要があります。現在、もっとも言語の習得に詳しいのは、おそらくAIの最前線に関わっている技術者たちだと思われます。

 私たちは、だれもが漠然と「話せるようになりたい」と考えているのですが、その実、それがどれだけ大変なことなのか、どうアプローチするのが適切なのかについて理解できている人はそれほど多くはありません。

 国内で英語を話せるようになる人というのはほんの一握りですし、さらにその中で、「外国語」として英語を学ぶ際の学習のメカニズムや訓練方法について理解できている人はさらに少なくなります。同じ事は、海外で英語を習得した人やネイティブスピーカーにも当てはまります(※)

(※)もちろん、彼らには彼らの強力な利点があります。それは何といっても、英語の国際性を“体”で理解しているという点です。この点はとても重要ですので、別の機会にお話ししたいと思います。

 では、いったいどうすれば良いのでしょうか。どういう角度からどうアプローチすれば、口頭コミュニケーション能力を身に付けることができるのでしょうか。

 この疑問に対する答を見出すには、やはり、まずは実際に会話力を身に付けた人の言葉に耳を傾けるのが良いでしょう。

海外留学者たちの話

 仕事柄、私は海外で英語を習得した人に何人も出会ってきましたが、彼らがそろって口にする点が、まず「初めの半年」です。

 英語圏に住んで、大雑把に1日8時間前後ダイレクトに英語に触れると考えると、「半年」ということは、これだけで私たちの中で比較的しっかりと勉強する人の1週間分に相当します。つまり、7倍です。ごく普通の人だと、2週間分ぐらいになるケースもあるかも知れません。つまり、14倍です。

 しかも、彼らは日々、日常生活の中で英語を使ってコミュニケーションをしています。これは国内で学習する場合にはまず実現できません。とても大きなハンディキャップです。

 海外で生活していると、コンビニやカフェで欲しいものを自分で注文し、店員の英語を聞き取って確認しないといけません。それも、うっかり忙しいランチライムに重なると、店員の英語は猛烈に速く、相当に慣れないと聞き取れません。

 店員がブツブツ言うのが聞き取れず、思わずOKと言ってしまったら、昨日からの残り物としか思えないサラダを手渡された。コーラが飲みたくて、「Cola, please!」といっても、なぜか通じない。そういった格闘を半年間にもわたって繰り返すわけです。

 もちろん、平日は、毎日4時間程度は語学学校で授業を受け、さらに宿題もするわけですから、半年間も続ければ、いくら英語オンチでも少しは話せるようになるはず――そう思うのが普通です。