ごく簡単に考えてみて下さい。もし、ネイティブのような感覚で音声から英語に慣れ親しみ英語が身に付き始めた子供たちに、これらの文法解説を行えばどうなるでしょうか。また、別の角度から考えますと、我が国の小中高で、国語の時間に、日本語にたいして「形容詞」「形容動詞」「助詞」「副助詞」などの区別を徹底的に教え、それらの理解を通じて日本語を理解することを強要するとどうなるでしょうか。

 ご存知の通り、「文法」の問題は、何も今に始まったわけではなく、これまでも、長年にわたって文法が分からなくて英語が分からない、あるいは嫌いになるという事例が多数発生していて、大きな議論になっていました。

 これまでは、そのような状況でもなんとか持ちこたえて来たわけですが、今後英語教育が成功すればするほど、これが巨大なリスクとなっていくわけです。

 私は、自分自身が文法で散々苦しんだため、それを出来るだけ簡素にする方向で、この30年ほど、理論と実践の両面からずっと模索を続けてきました。そして、ようやく世に問えるレベルにまでたどり着くことができました。たとえば、新中学2年であれば「分詞構文」、新中学3年であれば「仮定法」を、20~30分程度で導入して「とても分かりやすかった」というアンケ―ト結果を引き出すことができます。

 また、先日は、私の大学の系列高校で「中学文法で読み解く京都大学の和訳問題」という講座を開き、実質90分×4回で「とても分かりやすかった」という結果を得ることができました。参加者は6人(高1が2人、高2が2人、高3が2人)で、学力レベルは1人をのぞいて、ごく普通でした。また、「中学文法」といっても、生徒のレベルが心配でしたので、実際には中学文法そのものを解説するところから始めており、それを含めて90分×4回で読み解いたことになります。

 もしかすると、この文法システムが、どこかで役に立つ日が来るのかもしれません。

自動翻訳が発達した世界

 しかし、最近は、AIによる自動翻訳が劇的に進化しており、これを目の当たりにして、これはひょっとすると、自分のしてきたことは(良い意味で)不要になるかもしれないとも思い始めてもいます。

 自動翻訳が発達すると、必要なのはしっかりとしたリーディング力と表現などに関する知識のみとなり、あとはAIに翻訳を任せ、それを人間が修正すれば良いということになるからです。今は、まだ精度でいうと60~70%ぐらいというイメージですが、ビジネスレターやサイエンス分野の論文であれば、よほど専門的分野でない限り、あと2年もすれば90~95%のものが出現するでしょう。これはプロの翻訳者と変わらないレベルです。カジュアルな会話となると、3~4年ぐらいはかかるでしょうが、単純に「コミュニケーションをとる」というレベルでは自動翻訳はすでに十分な精度を持ち始めています。

 要は使い方で、たとえば、現状では、まだGoogle翻訳に「この場所はインスタ映えします」というのを入力すると、「I will instantiate this place.」と返されます。そこで、今度は「ここはインスタグラム用の写真を撮るのに良い場所です」と入れると、「This is a good place to take pictures for Instagram.」を返してくるといった具合です。

 しかし、実際の教育の現場がどうかというと、現状はまだ上述の通りで、込み入った文法解説と文法演習でおびただしい数の生徒が脱落するという問題を抱えたまま、スピーキングと早期英語教育の方向に突き進んでいる状況です。ここをどううまく乗り越えるかが、この先数年間の大きな課題になると思われます。

英語に関する限り、私たちの能力は30%程度しか引き出されていません。これはとても残念なことです。どうすれば残りの70%の能力を発揮できるのか。さまざまな観点から考えています。私の公式サイトはこちらです