私は、以前にも書いた通り、ショートスピーチや目的の絞られた短い会話を数百セット、音声とともに公開し、そこからいくつかをそのままテストとして出題する、つまり「アチーブメント型のテスト」を実施することがもっとも速攻性が高く、成果を出しやすい方策であると考えていました。テストが簡易になり信頼性が高くなることは言うまでもありません。英語力の強化が国策であるというのであれば、リーダーシップを取ってスピーキングについてだけは是非このような形にして欲しかったところです(※)。応用は大学でやれば良い。基盤が盤石であると、そこからの応用は自在です。

(※)この形にすると、まさしくスピーキングが「核」となり、リスニング、リーディングさらにはライティングにも大きな「波及効果」を期待できます。

 もし、アチーブメント型のスピーキングテストなどというものは、「単なる丸暗記」を引き起こすだけだという考えがあったとしたら、それは誤解としか言いようがありません。「単なる丸暗記の蓄積」が優れた言語能力につながるというのは、今のAIによる自動翻訳の発達を見ればよく分かることです(※)。とくに、格調高い英語、簡潔かつ理路整然とした英語を身に付けるには、それを徹底的に血肉化することがもっとも確実で早道です。中途半端な英文で中途半端なことをしても、中途半端な結果しか得ることはできません。

(※)この点は、これまでは一部の英語の達人たちの間での経験論でしたが、今では工学技術によってそれが科学的に証明され、すでに私たちの生活の中に浸透し始めています。

「文法」が最大のリスクになる可能性

 さて、ここでもう一度、スピーキングの導入と早期英語教育に戻りますと、もし、この2つの試みがうまく機能し始め、英語の感覚に優れた子供たちが現れ始めると、じつはあるとんでもない問題が大きくクローズアップされることになります。

 それが「文法」の問題です。

 早期から英語に触れ初め、英語に親しみを持ち始めて、脳内に「英語の回路」の片鱗のようなもの、英語力の土台のようなものが生まれ始めたとして、その先において、「三人称単数現在のs」や「SVOC」の解説はどうなるのでしょうか。

 実際に、この点について、最近、先生の方々の悩みを耳にすることが多くなりました。「外国語」として英語を学ぶ限り、「三人称単数現在のs」や「5文型」「態の変換」などの文法解説や演習が必要だが、それを生徒たちが嫌がる傾向が強くなってきている、どうしたら良いのか、というのがそれです。中には、他にもっと分かりやすい文法があるならそれで教えたいがどこを見ても無い、と語る先生もいます。

 実際、中学・高校のどの文法書を見ても、また問題集を見ても、これまでの文法解説や態の変換、話法の変換などの演習はそのままです。変わったところといえば、イラストが入っているものが多くなったという点でしょうか。これだけでも生徒たちにとってはとても分かりやすくなったと思いますが。

 しかし、早期に英語教育を始めるということ、そしてスピーキング力を養うということは、英語を「理屈抜きで理解できる能力」を育てることとイコールです。しかし、小学5年生、あるいは4年生に「三人称単数現在のs」や「5文型」を教えることは想像もできません。そもそも、彼らは、英語教育がうまくいけばいくほど、これらの文法ポイントを「解説なし」でクリアーしていきます。

 皮肉にも、ここが大問題になるわけです。