リスクファクタ――3

 もっとも懸念されるのは、そもそも、受験可能な試験が数種類あるからと言って、突如として現れた数十万人におよぶ受験者に民間試験が適切に対応できるのか、という点です。

 選考で選ばれた試験の中には、きわめて高品質であり、世界で認知されていながら日本ではほとんど知られていない試験もあります。しかし、それらの試験も、もし(その品質がゆえに)積極的に採用するという大学が現れると、それに対応せざるを得なくなります。その結果どうなるかというと、当然ながら品質が低下するということになります。もちろん、同じことはどの試験についても言え、一気に受験者が増えると、当然品質は低下します。

 民間試験のリソースは有限です。

リスクファクタ――4

 以上、実施・運用面からのリスクを挙げてみましたが、教育の現場も大変なことになります。リスニング力と違って、スピーキング力を身に付けるには、「実際に話す」ということが不可欠です。しかし、これを一クラス30人前後の生徒がいる教室で行うことは、そう易しいことではありません。教える側に(英語力を含め)高い練度が要求されますし、生徒の方にも一定レベルの意識が必要となります。

 これも、激しい競争原理が働いている社会であれば、結果を出しやすいでしょうが、容易に大学に入れてしまう今の日本ではかなり厳しいと思われます。

マジシャンが教えてくれた教訓

 最後になりますが、この休暇中、YouTubeで放映されていた米国のあるショー番組で、インドネシア人の少女のマジックを観て、その話し方に大いに感銘を受けました。彼女はホラーマジックが得意で、不気味な演出をし、ジャッジの問いかけにもほとんど応じません。しかし、いったん言葉(そのときはもちろん英語でした)を話すと、それが恐ろしいぐらいのインパクトを持って心に響き、記憶に残るのです。

 これで興味が湧き、そのあと彼女がアジアの番組に出ている動画を観たのですが、今度は明らかに英語とは異なる言葉で話していました。恐らくインドネシア語だと思うのですが、それでもとにかく心に響くのです。

 もしかすると、彼女の英語力はマジック関係の表現に限られているのかもしれません。そして、何かの英語試験を受けるとたいした結果が出ないのかもしれません。しかし、それはどうでも良いことで、大切なことは、彼女がインパクトをもって意思を伝えていたという点です。テスト論議も重要なのですが、このような視点からも、バイリンガル、さらにはトリリンガルであることの意味、さらに言葉というものの本質について伝えていくことが大切だと考えた次第です。

英語に関する限り、私たちの能力は30%程度しか引き出されていません。これはとても残念なことです。どうすれば残りの70%の能力を発揮できるのか。さまざまな観点から考えています。私の公式サイトはこちらです