さて、これだけの精度を持つ自動翻訳・通訳を無料で使えるわけですから、これを利用しない手はありません。いったいどのような学習方法があるでしょうか。まず一つ目の方法は、上のように、思いついたことや目にしたことをすべてリアルタイムで英語にして練習する方法です。「これは」と思う表現は、記録に残せばよいでしょう。

 私なども、英語を学び始めのころには、「何でも見たこと、言いたいことを英語で言うように訓練すればいいんだよ」などというアドバイスをよく聞いたものですが、これはまったくもって無責任極まりないアドバイスで、「言いたいことが口にできるなら世話はないわい」などと思っていたものです。しかし、なんと、高度なAIの登場によって、このアドバイスが現実のものになってしまいました。

興味あるスピーチでAIを試す

 もう一つの活用方法は、自分の興味のあることや人に話したいことについて短いスピーチを作り、それを繰り返し練習して身に付けてしまう方法です。英語の学習というと苦労の連続という人も多いかもしれませんが、潜在的な能力としては、人はだれもが非常に高い可能性を持っています。その能力が発揮されるのは「集中状態」のときです。たとえば、映画やドラマを夢中で観ていると、だれでもたった2時間程度で1G近い情報を記憶することができます。ですから、自分の興味のあること、人に話したいことをそのままズバリ英語にして練習すれば、それは間違いなく最高の学習法になり得ます。

 たとえば、私はつい先日、革新的ながん治療法についての記事を日本語で目にしました。名称を「近赤外線免疫療法」といいます。それで、同僚のネイティブにそれについて話したくなり、どう説明しようかと考えたのです。ところが、「近赤外線」(near infrared)や「免疫療法」(immunotherapy)という言葉は知っていたものの、「転移したガン」は知らないといった具合で、一発でうまく説明できるか自信がありませんでした。それでこの際ということで、google翻訳を利用してみたのです。するとつぎのような結果になりました。

読み上げた日本語
  • (a)日本人の研究者が、近赤外線免疫療法というがん治療法を開発しました。
  • (b)この治療法は、非侵襲性です。
  • (c)この治療法は、がん細胞のみを破壊します。
  • (d)この治療法には、重い副作用がありません。
  • (e)この治療法は、転移したガンにも効きます。
  • (f)この治療法は、あと2年か3年で実用化が期待されています。
※しつこいぐらいに同じ主語を繰り返しているのは、もちろん、AIに合わせているわけです。
google翻訳の回答
  • (a)A Japanese researcher has developed a cancer treatment called near infrared immunotherapy.
    ※はじめ「日本人」と読むと、「Japanese」と返されました。つぎに「日本人研究者」と読むと、「Japanese researchers」と返されました。
    ところが、じつはこの治療法を着想したのは一人の日本人研究者です。そこで、試しに「日本人研究者と読み上げてみるとうまくいったという次第です。この辺りが非常に難しいと言え、変な訳が返ってくる一因になっていると思われます。
    ※また、AIが何気に完了形を「使いこなしている点」に驚きました。完了形なら分かるという人がいるかも知れませんが、的確に使うとなると、かなりハードルが高いはずです。
    ※ちなみに、念のためWebで調べてみると、「近赤外線免疫療法」の正式名は「Near Infrared Photoimmunotherapy」でした。
  • (b)This treatment is noninvasive.
  • (c)This treatment destroys only cancer cells.
  • (d)This therapy has no serious side effects.
    ※なぜか「treatment」が「therapy」になっています。2度、3度とやっても同じでした。これも、AIの何がしかの進化を意味するのでしょうか。他、「no」という英語独特の「ゼロの概念」を使い、さらに「effects」と複数形を使うなど、驚くほど正確です。
  • (e)This treatment also works for metastasized cancer.
    ※まず「治療法が効く」という日本語にたいして、しっかりと「works」を返しています。「薬が効く」、さらには「仕事が上手くいく」でも「work」を使いますが、日本人にはなかなか使いこなせない言葉の一つです。また、「転移したガン」を、別途ウェブで調べてみましたが、ガンが転移することをmetastasizeと言うようで、本例では「転移したガン」をそのまま英訳したようです。しかし、さらに調べると、「転移ガン」というのは「metastatic cancer」と言うようで、念のため改めて「転移ガン」と読み上げると、google翻訳はこの言葉を返してきました。なかなかやるな。
  • (f)This treatment is expected to be put into practical use in 2 or 3 years.
    ※この文例については、初め「2、3年で」と読み上げたのですが、それに対してgoogle翻訳は「23年」と返してきました。そこで、「2年か3年で」と読み上げ直したところ、ズバリの英訳を返してきました。この辺りにも、難しい点があるのかも知れません。「今のところは」、ですが。

 さて、このようにして英語のチェックが終わると、その日のうちに少しばかり練習をしておき、翌日、さっそくこれらの英文をつなぎ合わせて話をしたところ、大いに盛り上がりました。もちろん、「皆さんは若いからいいけど、私はあと3年間はガンにならないように気を付けないとね」(Luckily, you are young. I have to be very careful not to get cancer for three LONG years.)というジョークを交えたことは言うまでもありません。AIを使い、言葉の壁を乗り越えて盛り上がる……まさしくSFの世界が現実となってきました。

(※)上記の英文もすべて、ネイティブに見てもらいましたが、「問題なし」でした。