真逆の現象

 ところが、不思議なことに、このように高得点を取ったのに話せない、書けないという困った事が起きている一方で、真逆の現象も起こっています。

 つまり、TOEICで400点前後しか取れないのにスピーキングやライティングが(800~900点の人たち以上に)できる人がいるのです。

 例えば、ライティングについてお話しすると、私はTOEICで430点程度しかないのに、ネイティブ並みの驚くべきビジネスメールを書く人を知っています。

 その方は、私のTOEIC研修を受けた方の一人で、3カ月の研修で330点程度から430点程度になりました。私は、彼がてっきり昨今の世間の流れでTOEICを受験しただけのことだと思っていたので、その方から英文メールの添削の依頼が来た時には、大いに焦りました。430点程度では添削どころの騒ぎではないのが分かっていたからです(※)

(※)このレベルでは、ほぼ確実に全文書き直しになります。たとえ文法的に正しく書けていたとしても、英文として成り立っていないのが普通です。実は、文法的にも破綻しているケースが多いですが…。

驚嘆のビジネスレター

 しかし、(失礼ながら)厄介なことになったと思いながら、取りあえず添付のファイルを開いて見たところ、なんと、そこには実にsuccinctで、かつto the pointな、プロ並みの英文が書き込まれていたのです。決して誇張ではなく、これには驚嘆しました(※)

(※)succinct:簡潔明瞭な、to the point:要点を突いている→日本語を活用すると、超高速で、脳に焼きつくように語彙が記憶されます。英文ではこうはいきません。この理由は以前にお話しした通りです。

 TOEICのスコアとのあまりのギャップに、何が何だか全く理解できず、私は直接その方に電話をかけて話を聞くことにしました。懇意にしていましたので、ストレートに「あの英文はご自分で書かれたのですか」と聞いたのですが、彼の答えは「はい。どんなものでしょうか…」というものでした。

 私は、「どんなものも何もないですよ。完璧な英文。これぞビジネスメールと言える素晴らしい英文です」と答えましたが、そのあと思わず「なのですが…」という言葉が口を突いて出てきました。

 彼の方は気に留めた様子もなく、そのまま「そうですか、よかったです。有難うございました」といって電話を切ろうとするので、私の方が慌てて、「待って下さい」と制し、「いったいあれはどのようにして書いたのですか」と聞きました。

 そうすると、彼は一呼吸おいて、つぎのように答えたのです。「じつはネット上のテンプレートを利用して書きました。カンニングですね。でもやはり自信がなかったので先生に見てもらおうと思いまして…。すみません。本当に有難うございました」。

 もちろん、彼は(抜け目なく)日本語の対訳をフルに活用していました。

――実に鮮やか――

 私はとても感銘を受けました。そして、気づいたのです。「テストを盲信してはいけない」と常々言っている私自身が、見事に固定観念のワナにはまっていたことを。

 さて、この事例を読まれてあなたはどう思われましたか。