洋楽で学ぶ文法ポイント

 では、ここで洋楽の歌詞を使って、文法のポイントを一つ説明して見たいと思います。以前、映画「アルマゲドン」の主題歌を使って「仮定法」の本質についてお話ししました。今回は世界でもっとも知られている曲の一つで、映画「ボディガード」の主題歌である「I always love you」の主題歌の一部を使い、文法の中でも、私たちにとってもっとも分かりにくい点の一つについて説明したいと思います。それは、「数えている/数えていない」です。

 実例は次の通りです。訳は、わざと直訳調にしています。

Bittersweet memories(甘く辛い記憶)
That is all I’m taking with me(それが、私がこれから心に抱いていくすべて)

(※)もともとbitterは「苦い」という意味ですが、ここではコンテクスト(意味背景)から「甘く辛い」と考えます。

 歌詞のこの部分の語数はたったの9語です。しかし、その中には、重要と言える文法ポイントが少なくとも3点あります。その中から、ここでは敢えて1点だけを扱いたいと思います。それがどこかというと、下線部のmemoriesです。

 一般的には、この辺りについて解説する際には、「可算名詞」「不可算名詞」という言葉が使われます。しかし、「仮定法」と同様で、これもあまり本質的な説明とは言い難い点があります。なぜなら、「不可算名詞が可算名詞になる」(またその逆)という訳の分からないケースが多発するからです。

 memoryというのは「記憶」という意味ですが、「記憶」というのは数えることができるのでしょうか。つまり、「可算名詞」なのでしょうか。それとも、「不可算名詞」なのでしょうか。私自身も、この分類には随分と悩まされました。しかしある日ふと、視点を変えるとどうなるだろうかと思いついたのです。

 もし、文法分析から入るのではなく、実際にライターが「記憶」というものを「数えている」かどうかを確認し、もし「数えている」とするとしたらそれは何を意味するのか、と考えるとどうなるだろうかと考えたわけです。これは、言い換えると、「あるがままの英文」を「受け取る」という視点から意味を考えてみようという事です。

 そう考えると、この歌詞でライターは明らかにmemoryを数えています。どうしてなのでしょうか。その答えはこうです。「数えている」ということは、単純に考えて「いくつかある」という事です。そこにbittersweet(甘く辛い)という説明がつけられていますので、bittersweet memoriesというのは直訳すると「甘く辛いいくつかの記憶」となります。しかし、このままではあまりにもそっけないです。そこで、「甘く辛い様々な記憶」と考えるわけです。少し直訳っぽいですが、ここまで分かれば、あとは全体のコンテクスト(意味背景)の中でライターのメッセージを十分正確に理解できます。

 応用例を挙げると、

This song brings back memories.

なら、「この曲を聴くと様々な記憶がよみがえる」という意味になります。この訳もやや直訳調ですが、コンテクストの中で考えると伝えたい内容は十分に理解できます。

 いずれにせよ、このように、言葉をコミュニケーションの手段であると考え、無闇に文法的な分析・分類を行わずに、実際に発信者から手渡された英文を見て、何を言わんとしているかを理解しよう(=受け取ろう)とすると、英語はシンプルに理解することが可能です。

 英語に関する限り、私たちの能力は30%程度しか引き出されていません。これはとても残念なことです。このコラムでは、どうすれば残りの70%の能力を発揮できるかについて、日本語を活用するという手法を中心にさまざまな観点からお話ししていきます。

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