本コラムでも何度か紹介していますが、英語の学習の一つの有効な手段は映画・ドラマです。何を学習するにしても、そのカギは集中力にありますが、その点、映画・ドラマはとても優れていて、自分の好きな作品であれば、VR(仮想現実)に近い感覚で集中できます。映画やドラマを観ていて、笑ったり、ドキドキしたり、ハラハラしたりした事は誰にでもあるはずです。このときに起こる記憶というのは、強力です。しかも、それは「楽しい集中」ですので、すべてがプラスに増幅されます。

 逆に弱点は何かというと、一つには、映画やドラマの英語は“外国人”である私たちにとっては使用される語句・表現、そして速度などの点で、敷居が高いケースが多いということです。また、会話が本当の意味で生きているため、ストーリー展開と複雑に絡み合っており、表現を部分的に切り出して使うことが難しいという点もあります。

 これらの点に配慮して、会話をシンプルにとらえ直し、Aさんが何かを言ってBさんが答えるという一対の最小単位の会話にしたのが、「マイクロ会話」です。「マイクロ会話」はレゴのブロックのように自在につなげることができますので、これを特定の話題に絞って練習すると、ごく短期間に「話す感覚」を体験することができます(※)

(※)この考え方に基づく教材は高く評価され、イードアワード賞という賞を2年連続で獲得しました。それをさらにパワーアップしたものが、スピークエッセンスという英会話教材です。

 このように、私はこれまで色々と工夫を凝らし、単語集から学習法、文法本、さらには英会話教材までを開発してきたのですが、それはすべて「learner-friendly」(学習者にやさしい)を実現するためでした。「外国語」として英語を学ぶことはそう簡単なことではありません。やる気があるのに学習方法が分からない、思うように学習が進まない、という人たちが今でもたくさんいます。その点を何とかしようというのがこのコラムのテーマです。

 ここで話を戻すと、映画やドラマというのは英語をVR的に体験できる、ある意味で最強の学習ツールなのですが、使いこなすことはそう簡単ではありません。そこで、今回はこれと同じぐらい強力な学習素材をご紹介したいと思います――それが「洋楽」です。

私を驚かせた英作能力

 社会人や大学生、高校生など、私はこれまでに何千人という生徒を直接教えてきました。その中には、全国で英語の成績が何番というようなとてつもない能力の持ち主が何人もいました。しかし、私を本当の意味で驚かせた生徒は、たった一人です。しかも、彼は特段に高い能力の持ち主というわけでもなく、ごく普通の生徒でした。どうして私がその生徒に驚いたかというと、明らかに日本人離れした、素晴らしい英文を書いたからです。彼の書く文章は、文法がどうのというよりも、語句の使い方が日本人離れしていました。言葉に対する感性が語感レベルで違っていたのです。