特筆すべき点として、私たちは中国語の文法を一切学びませんでした。もちろん、テキストにも一行の説明もありません。それでも相手の言う事が分かり、瞬時に応答できるようになっていきました。そして、さらに不思議な事に、練習を続けるうちに、文法的なルールが解説なしに分かるようになっていったのです。つまり、文法が創発的に習得されていったのです。これについては、脳の情報処理の性質から予測していたのですが、予測するのと実際に自分で体験するのとは大違いで、なんだか、言語習得の奥義に触れたような気がしました。

 上で述べたような練習を毎日1か月半続けると、流暢といって良いレベルにまで会話ができるようになりました。

 そこで早速成果を発表する会を開き、私はアシスタントと2人で、この教材で習得した中国語を披露することになりました。聴衆は、そのほとんどが理系の教員や研究員で、中には中国からの留学生もいました。かなり緊張しましたが、大変好評で、とくに発表を主催してくださった物理学の教授からは「これがサイエンスだ」という言葉をいただくことが出来ました。

中国語の先生をアタック!

 ところが、私自身はそれだけではどうも納得できませんでした。なぜなら実際にネイティブと話したわけではなかったからです。そこで、たまたま、非常勤講師としてある大学に教えに出向いていたときに、中国語の先生らしき人を見かけたので、後を追いかけ話しかけたのです。それも、挨拶もせずにいきなり後ろから、「ニー・シー・ファン・チュウフ・ディェイン」(どんな映画が好きですか)とやったわけです。

 彼女は少し驚いて振り返ると、「お上手ですね。どこで学ばれたのですか」と丁寧な日本語で聞いてこられました。そこで、私は「日本です」と答えました。ところがその瞬間、彼女の表情が変わり、すぐさま「どのぐらい勉強されたのですか」と聞いてこられました。私は、「1か月半です」と事実をそのまま伝えました。

 その後どうなったかというと、私は彼女のオフィスに連れていかれ、30分ほど質問攻めに遭うことになりました。「私の学生たちは2年かけても四声(=イントネーションのこと)ができません。いったいどうしたら…」等々。

賞の獲得、そしてパワーアップ!

 その後、私は話題の数を増やし、学習マニュアルも付けて、この方法に基づく英会話教材を作りました。その教材は、瞬く間にユーザーの間で評価を得、イードアワード賞というコンテストで1年目に留学体験者部門で最優秀賞をいただき、2年目には総合で優勝しました。私は、その後、それをさらにパワーアップしたものを制作し、「スピークエッセンス」という名称で発表しています。

 いずれにしても、コンパクトでシンプルとはいえ、たった1か月半で1つの話題について「まったく未知の言語」で流暢に話せるようになったのには、考案した私自身も驚きました。それは、本当に不思議としか言えない体験で、異言語によるコミュニケーションの原点を感じました。今の私の夢は、この教材の「フランス語バージョン」を作って学ぶことです。やはり、フランス語はどこかお洒落ですから…。今回の話を通じて、少しでも英会話に関するヒントを得ていただければと思います。

 英語に関する限り、私たちの能力は30%程度しか引き出されていません。これはとても残念なことです。このコラムでは、どうすれば残りの70%の能力を発揮できるかについて、日本語を活用するという手法を中心にさまざまな観点からお話ししていきます。

 英会話にお困りの方は、ぜひ一度私が開発した最新の会話教材リッスントークをご検討下さい。私の公式サイトはこちらです