話せない理由②

 頭が膨らみ過ぎている・・・文法解説で。動名詞、現在分詞、後置修飾、仮定法過去(事実に反する仮定)―――私たちの頭の中は、こういった多数の用語と、あれをしてはいけない、これをしてはいけないという規則で埋め尽くされています。

 これがスピーキングでは大変なことになります。なぜならスピーキングというのは、いわば“瞬間芸”で、思ったことがタイムラグ無しに、ほぼ瞬時に口から出てこないといけないからです。つまり、ルールについて考えながら英文を作るヒマ、英作をしている時間がありません。例えば、あなたは、中学校1年生で習う「三人称単数現在のs」を使おうとして口が動かなくなった経験はありませんか。いや、それより以前に、書くときにさえ、意識していてもつい間違える、ということはありませんか。これが、文法重視の学習法の限界なのです(※)

(※)文法をしっかりと理解し、演習してからトレーニングすると良いという考え方もありますが、これは疑問です。なぜなら、人間の頭の中では、情報はネットワーク上につながっているため、規則を知れば知るほど、必ずそれに足を取られることになるからです。文法的な知識をゼロにすることは難しいですが、少なければ少ないほど英語は身に付きやすくなります。また、途中で力尽きる学習者の数も減ります。さらに言うなら、伸びる人、努力する人は、これまでの2倍、3倍の速度で英語力を伸ばすことができます。

スピーキング力の6割はすでに身に付いている!

 少しネガティブな話になりましたが、ここで明るい点についてお話しましょう。それは、あなたはすでに6割方、英語を話す準備が出来ているということです。

 この秘密もやはり日本語力にあります。例えば、私などはサイエンス系の話になると結構口が動きますが、エンタメ系の話となるとかなり駄目です。そして、それはそのまま英語のスピーキング力にも現れます。あなたにも、そういった好きな分野・得意な分野とそうでない分野があるはずです。

 さて、ここが大切な点なのですが、前者については、英語はもうすぐ手の届くところにあります。なぜなら、スピーキング力を身に付けるときに最も大切な点は、「話したいことがある」「伝えたいことがある」ということだからです。つまり、「コンテンツ」と、それを英語で伝えたいという「強い動機」です。この2つがあると、話は半分終わったようなもので、あとはそれを英語で言えるようになれば良いだけのことです。そのぐらい、この2つのポイントは学習効果に影響を与えます。

スピーキング力を伸ばすテクニック

 実は、スピーキング力を伸ばすのに、とくに難しいテクニックは必要ありません。大切なのは、①常に日本語で意味を確認し、頭を起動した状態にしておく、②徹底的に音を真似て口に出す――この2つだけです。

 ①については、バイリンガルと言われる人たちの頭の中がどうなっているか知りませんが、普通の人の場合、頭の中はほぼ100%日本語で出来ています。ですので、「これを言いたい」と思った瞬間、私たちは日本語で考えています。その集中状態のところに英語をインプットすることによって、日本語の回路の上に英語の“疑似回路”を作ってしまうわけです。こうしておくと、何か言いたいと思った瞬間に、英語の回路が起動し、瞬時に情報が引き出せるようになります。つまり、「瞬間通訳」です(※)

(※)同時通訳者の頭の中はこのようになっています。ちなみに、ある有名な通訳者派遣会社の責任者の方が、通訳者になるにはまず日本語力が大切で、中途半端に英語と日本語ができてもプロとして通用しないと言っていたのが印象的でした。やはりそうなのか、と。