例文集や表現集でも、「数」で勝負するのではなく、英語の発想が分かるように日本語で簡単な解説が入っているようなものが意外と役に立つことがあります。

 私も、ある表現集をそのような方法で勉強していた時期がありましたが、あるとき学生の海外研修先でちょっとしたトラブルがあった際に、思わぬ形で役に立ったことがあります。それは「give the benefit of the doubt」(大目に見てやる)という表現で、要は、間に入ったネイティブのコーディネーターが、トラブルを起こしたホームステイ先のマザーを大目に見てやれないかというときに出てきました。国内で普通に英語を学習していてこの表現を理解し、使用することはまず無理だったと思います。

 いずれにせよ、例文集は、もし使うのなら「気の向いたときに軽くやる」程度にした方がベターで、気のひかれる表現を10文に1文程度練習すればそれで十分です。また、必ずしも文章として覚えなくても、コアになる部分だけでも頭に入れておけばそのうち使えるようになります。初めから100%完璧にというのではなく、こういった「部分を攻めて全体を崩す」という発想が、脳の情報処理の特性に合った学習方法です(『英語学習がうまくいかない理由とその解決方法』参照)。

最強の英会話素材

 3つ目の素材は、「最強の英会話素材」といって良いでしょう。それは、ズバリ、映画・ドラマです。これらの素材がなぜ最強かというと、ごく簡単にいって、最高の集中状態が、VR(Virtual Reality)の中で起こるからです。

 深い学習は、集中状態のときに起こります。うわの空だと何時間学習しようと効果はありません。映画やドラマは、その集中状態が「もっとも効果的に」起こるように、その道のプロフェッショナル達によって作られており、その完成度は中途半端なテキストの比ではありません。

 また、VRに入り込むということは、これ以上は英語圏で生活をするほかないというほどのレベルで、リアルに明確に、話の流れやビジュアルな背景を理解した学習ができます。このようにリアルな環境の中で身につけた表現は、他の様々な情報と関連づけられて「使える状態」として頭に保存されます。

 でも、ここにとても皮肉なことがあります。それは、映画やドラマは「最強に良い素材」であると同時に「最強に難しい素材」でもあるということです。映画やドラマの中では、世間話どころか、科学用語・法律用語など高度に専門的な語彙が(ごく普通の会話の中で)容赦なく出てくることが普通にあります。また、文化背景が分からないと理解できないような言い回しやジョークもバンバン出てきます。会話の速度も、まさしく「ナチュラル」で、知っている言葉や表現でも聞き取れないことが(例外ではなく)普通にあります。

 また、モノによっては、「こんなに砕けた表現はまず使わない」「これを使うと品位が疑われる」というようなセリフがポンポンと出てくるようなケースもあります。「リアル」で「鮮度が良い」だけに、映画やドラマはとてもハードルが高く、扱いにくいのです。

 実際のところ、私もこの障壁の高さに、映画・ドラマを学習の素材として使うことを長い間あきらめていました。実用英語を学び始めたころに、何かの映画で、「I got a great kick out of this.(もう超コウフンしたよ)」という表現を耳にして、全く何を言っているのか分からず、「I felt like I'd got kicked out of the world of English.(英語の世界から蹴り出されたような気分になった)」のです。

 しかし、その難度を知り尽くしてはいても、長年あれこれと試行してきた中で、今ではたとえ初心者であっても映画やドラマを学習素材として使わない手はないという結論に至っています。

 そもそも、洋画を観ている人、楽しんでいる人がたくさんいるわけですから、それをそのまま放っておくのはもったいないと言えます。「あばれ馬」のようなものをいかに手なずけ、利用するか。次回は、映画・ドラマの賢い活用方法についてお話ししたいと思います。

 英語に関する限り、私たちの能力は30%程度しか引き出されていません。これはとても残念なことです。このコラムでは、どうすれば残りの70%の能力を発揮できるかについて、日本語を活用するという手法を中心にさまざまな観点からお話ししていきます。

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