さて、「狙いを定める」というところに話を戻すと、1つには「実用のための英会話」を意識するのか、「世間話(small talk)のための英会話」を意識するのかで大きく結果が違ってきます。「実用のための英会話」がどのようなものかというと、その典型例は「海外旅行のための英会話」です。旅行英会話は、話題の範囲や使う表現が限られているため習得しやすいですし、すぐに使えるためモチベーションも維持しやすく、成果も実感しやすいです。

  • A:負けてもらえない? (Can you give me a discount?)
  • B:これが精一杯です。 (This is our best price.)

 また、日常生活のための基本的な会話も実用のための英会話と言えます。例えば、

  • A:今週空いている?  (Are you free this weekend?)
  • B:ごめん、予定あり。 (Sorry, I have plans.)

などはそうでしょう。ところが、「世間話(small talk)」となると、話が一気にややこしくなります。なぜなら、その名の通り、時事のことから身の回りのことまで、内容・話題が多岐にわたるからです。

  • A:AIってやばくない? (This AI thing is pretty scary, isn't it?)
  • B:仲良くやるしかないね。 (We've got to learn to live with it.)

 このような会話になると、言いたいことがなかなか英語で言えない上に、「相手の言っていることは分かるのに反応ができない」ということが頻繁に起こります。この違いをよく理解して学習することが効果的な学習のポイントです。

素材の選び方

 さて、英会話の素材は狙って選ぶのが基本です。まずは簡単な洋書の多読から――などと言っていると、(ごく一部の人以外)一生話せるようにはなりません。明確な目的を持ち、狙いを定めて素材を選ぶことで、初めて成果を出すことが可能になります。

 素材は、大きく3つのグループに分けられます。1つ目は、いわゆる英会話のテキストです。これを選ぶときに大切な点は、「実用に徹しているか」です。市販のテキストには、「英会話のため」としながら文法のためとしか思えないような「使えない英文」が並んでいるものや、面白さを付け加えるためか世間話の領域に足を踏み込んでいるものがあります。リスニングの練習ならそういったものでも良いのですが、スピーキングとなると「無駄は一切許さない」という姿勢のものがベストです。

 テキスト自体に「面白さ」を求める必要はありません。自分が、いかに無駄のない、実用に徹した、すぐに使える表現を身につけていっているかという点に「面白さ」を見出すようにすると、最短の時間で最大の効果を得ることができます。スピーキングの場合には特にその傾向が強くあります。

 2つ目は、例文集です。これは、「たった一冊で2000文」といったような出され方が多いのですが、ここでも実用に徹しているかどうかが、まず第一のポイントになります。私は20冊前後の例文集を調べたことがありますが、その中で「これは実用に徹している」、「プロが初心者の立場に立って書いている」、「信念がある」と言い切れるものは、ほんの数点でした。

 実用に徹している例文というのは、まず例文が短く、長くてもせいぜい7語程度です。そして、そのコンパクトさの中で、必要な情報が厳選されています。世間話的なことやジョークなどを入れて面白くしようなどという配慮は全く必要ありません。そっけ無さを感じるかもしれませんが、その方がかえって良いのです。もちろん、音声が日本語→英語の順序で入っていることは基本です。

 しかし、例文集は、たとえ優れたものでも、本格的な学習には使えません。なぜなら、どうしても例文の羅列にならざるを得ず、記憶に残りにくいからです(※)。うまく使う方法としては、「この日本語はいったいどのような英語になるのだろう」という視点で、パラパラとめくりながら目に留まったものをマークし、日本語→英語の順序で20~30回ほど集中的に音読すると何かの拍子に役に立てることができます。

(※)もう一つの問題点として、書籍の場合にはコストの問題から、どうしても、よく工夫された、手厚い音声を付けることができないという点があります。