国際競争力高いディスカウント美容室

格安美容室の競争力は高そう(写真:PIXTA)
格安美容室の競争力は高そう(写真:PIXTA)

<例2>理髪
 筆者の直近の滞米中(2013年まで)、近くの町の床屋の価格は12ドルで、チップを入れて15ドル支払っていた。サービスの内容は厳密に理髪のみで、15分程度で終了する。これに対応する日本のサービスはディスカウント美容室であり、カットだけなら1000円弱で済む。つまり、価格面では米国が50%高い。

 ディスカウント美容室のサービス内容はおおむね米国の床屋と同じだが、細かな気配り、丁寧さ、清潔感などを勘案すれば、筆者としては20%くらい高くても日本のサービスを選ぶだろう。この結果、質、価格を勘案した日本の優位性は、筆者にとって80%になる(質格差20%、価格差50%、1.5×1.2=1.8)。

 この点につき、サーベイの該当項目は「理容・美容(エステを含む)」となっており、理髪より広い概念である。この項目に関する日本人の質評価は16.1%日本優位となっており、この評価に違和感はない。

 一方、相対価格の評価では、日本人は「日本が1.5%安い」、米国人は「日本が3.8%高い」となっており、いずれも大きな日米格差はない。しかし、少なくとも理髪に関する限り筆者が体験した価格差は大きく、我が国ディスカウント美容室の国際競争力は、サーベイから推計されるものよりずっと高いことになる。

日本のラーメンの国際競争力は?(写真:PIXTA)
日本のラーメンの国際競争力は?(写真:PIXTA)

<例3>ラーメン店
 海外でもラーメン店が増えており、その値段はネットで容易に調べられる。NYで提供されているベーシックなラーメン1杯の値段は 17ドル、チップを入れるとおおむね20ドルだろう。同程度のラーメン(質評価において遜色ないもの)を東京で食べると、800~1000円が相場である。NYで東京と同程度の品質のラーメンを提供しようとすると、日本から輸入せねばならない食材があるためコスト高になり、その分販価に上乗せされる。しかしそれを勘案しても、日米の価格差は70~80%程度になると思われる。

 海外のラーメン店には我が国の企業が進出しているケースが多く、また牛丼、うどんなど他の外食でも海外進出が進んでいる。こうした現象は、我が国のサービス業者の潜在国際競争力が顕在化したものとみることができる。

日本と米国のコンビニは「別物」(写真:PIXTA)
日本と米国のコンビニは「別物」(写真:PIXTA)

<例4>コンビニエンスストア
 滞米中の筆者は、コンビニで買い物をすることはほとんどなかった。米国のコンビニであえて買いたいものはなく、スーパーで他の食品と併せて買えば済むものばかりだったからである。また、米国のコンビニは日本と異なり至るところに出店しているわけではないので、都市中心部の住民でなければ買い物場所の選択肢に入ってこない。こうした意味で、米国のコンビニは全くconvenientではなかった(*3)

*3 ほとんど利用したことがない筆者が米国のコンビニを評価することには、問題がある。この点が気になる方は、他社の媒体ではあるが筆者がネットで見つけた現地取材レポートなどをご覧いただきたい。日米コンビニの違いがよく分かる記事である。

 これに対して日本のコンビニは、住まいの近くだけでも数軒ある、24時間営業している、すぐに食べられる弁当、おにぎり、サンドイッチなどいずれも質が高く、さらには専門の洋菓子店とさほど遜色ないのにずっと安いスイーツなど、「あのコンビニに行けばあれを買える」と思わせるものを数多く取りそろえている。コンビニチェーンは商品企画グループを擁し、消費者にアピールする新商品の開発に励んでいる。つまり我が国のコンビニは、米国のコンビニとは別次元のサービスを提供している。

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