ある業界で産業効率が高まった時、他業界に起こることは?(写真=PIXTA)
ある業界で産業効率が高まった時、他業界に起こることは?(写真=PIXTA)

 本稿の第1回、第2回では、生産性論議で使用される指標である労働生産性とTFPを取り上げ、おのおのの得失を説明した。このうち労働生産性は直感的に分かりやすく、算出も比較的容易なため、実務家により多用されている。しかし、この指標の高低によって生産の効率性が正しく測定できるわけではなく、厳しく言うと「何の話をしているのか分からない」ケースが見受けられる。

 これに対して、経済全体について算出された労働生産性(マクロ労働生産性)と1人当たり実質GDPが対応している(*1)ことを踏まえると、労働生産性にはやはり意味があるという反論を前回紹介した。国民の平均的な豊かさを示す指標として、1人当たりGDPが重要なことに議論の余地はない。それならば、この指標と密接に関連する労働生産性もおのずと重要なのではないか。この観点から今回はまず、わが国のマクロ労働生産性についてデータを見てみることにしよう。

*1 この点については本連載の第1回を参照。

わが国のマクロ労働生産性の推移

 経済協力開発機構(OECD)は様々な分野で活動しており、生産性に関する統計や分析にも力を入れている。OECDは幾つかの生産性統計を国別に公表しているが、ここでは「労働時間 1 時間当たりの実質 GDP」を見てみよう(*2)

 なお生産性に限らず、複数国の経済データを検討する際には、比較可能性を確保するため共通の単位を用いる必要がある。その1つの方法は、その時々の為替相場を使って共通通貨(例えば米ドル)ベースに換算することだが、為替相場はしばしば大きく変動するため、換算されるデータはその影響を強く受ける。これを避けるため、購買力平価(PPP)を使用した労働生産性に的を絞って議論する(*3)

*2 これは、第1回で示したLP*に相当する。
*3 詳細な説明は割愛するが、これは「消費バスケット(標準的な家計消費財の集合)の価格を各国で同一とする為替レート」を換算に使用することを意味している。

 このベースで算出された日本の労働生産性は、統計が利用可能な1970年以降現在まで、一貫して20位近傍を推移している。この間、OECD加盟諸国は23から38に増えており、日本の順位は大方の新規加盟国(その多くは新興市場国)より高いが、当初から日本を上回っていた先進国を追い越すという現象はほとんど生じていない。

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