異文化経営のスペシャリストとして、エリン・メイヤー教授が注目されるきっかけとなった分析ツール「カルチャー・マップ」とはどのようなものか。またコロナ禍はグローバル組織の運営に、どのような影響を及ぼしているのだろうか。

(写真:PIXTA)
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 カルチャー・マップは企業の管理職の行動のなかでも文化的差異が最も出やすい8つの分野を指標として、世界各国の文化をマッピングしたものだ。例えば「コミュニケーション」の指標では、言葉以外の情報(コンテクスト)を重視するハイコンテクスト型の傾向が強いのか、あるいは言葉に重きを置くローコンテクスト型の傾向が強いのかを評価する。「見解の相違」の指標では、意見が食い違うときに対立をいとわないか、それとも対立を回避しようとする傾向が強いのかを評価する。文化に注目すべき理由を、著書『異文化理解力』(英治出版)のなかでこう指摘している。

文化の影響に無自覚なマネジャーたち

 国をまたいでビジネスをするマネージャーの大部分は、文化が自らの仕事にどのような影響を与えているかほとんど理解していない。何十年も文化をまたいで仕事をし、各国へ頻繁に出張しながらも、文化が自分にどのような影響を与えているかには無知で無自覚なことがよくある。

 現代はどこで働いていてもグローバルなネットワークの一部だ。他の文化を読み解く方法を知り、陥りがちな文化のわなを回避する方法を知らなければ、行き違いや不要な対立や決定的な失敗が生じる。

 文化の違いに注目するとステレオタイプに陥ると懸念する人もいるが、文化の差は関係ないと思って他者と接すると、自分の文化のレンズを通して相手を見るので判断を誤ることもある。

 もちろん、各文化のなかにも個人差はある。カルチャー・マップの示す各国の位置は、膨大な数の管理職への聞き取り調査から、まずそれぞれの国で許容されている、あるいは適切と見られている「平均点」を導き出し、さらなる聞き取りによって微調整を加えるという方法で決定されている。

 メイヤー教授が強調するのが、文化の相対的位置を見ることの重要性だ。

<span class="fontBold">エリン・メイヤー[Erin Meyer]</span><br />INSEAD(インシアード)マネジメント実践教授<br />大学卒業後、米政府が運営するボランティア組織「平和部隊」の一員としてアフリカで2年間英語を教える。INSEAD客員教授を経て2021年から現職。専門は異文化経営で、企業幹部向けプログラム「国境と文化を超えるリーダーシップ」のディレクターも務める。世界各国の文化を8つの指標で分析する「カルチャー・マップ」で注目を集め、世界で最も影響力のある経営思想家を選ぶ「Thinkers50」に過去2度選出されている。
エリン・メイヤー[Erin Meyer]
INSEAD(インシアード)マネジメント実践教授
大学卒業後、米政府が運営するボランティア組織「平和部隊」の一員としてアフリカで2年間英語を教える。INSEAD客員教授を経て2021年から現職。専門は異文化経営で、企業幹部向けプログラム「国境と文化を超えるリーダーシップ」のディレクターも務める。世界各国の文化を8つの指標で分析する「カルチャー・マップ」で注目を集め、世界で最も影響力のある経営思想家を選ぶ「Thinkers50」に過去2度選出されている。

 「例えば日本人がブラジル人と仕事をすると、なんて直接的な物言いをするヒエラルキーに無頓着な人たちだろうと思う。だがオランダ人から見ればブラジル人ははっきり物を言わないし、ヒエラルキーを重んじる。それはブラジルが『コミュニケーション』の指標ではハイコンテクストの日本とローコンテクストのオランダ、『リーダーシップ』の指標では階層主義的な日本と、平等主義的なオランダの中間にあるからだ。

続きを読む 2/2 日本人とドイツ人が協力しやすい理由

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