米ネットフリックスを題材に、イノベーティブな組織を分析した経営学者、エリン・メイヤー氏。前回は、採用と解雇を通じて「能力密度」の高い状態を維持することが第一関門であることを見てきた。次の課題は「率直さ」の醸成だという。

(写真:PIXTA)
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 まず、なぜ率直なカルチャーを醸成することが重要なのか。

 「リーダーシップ開発が専門のコンサルティング会社、米ゼンガー・フォークマンによる興味深い調査がある。自分の仕事ぶりに対して褒め言葉や励ましのような肯定的フィードバックと、問題点や改善すべき点を伝える修正的フィードバックのどちらを受け取りたいか尋ねたところ、回答者の57%が修正的フィードバックを好むと答え、肯定的フィードバックの43%を大幅に上回ったのだ。

 また72%が『上司から修正的フィードバックをもらえれば、自分の成果は高まる』と考えていた。つまり、たいていの人は率直なフィードバックが自分の仕事の能力を高めることを理解しているのだ」

心理的安全性に対する誤解

 メイヤー教授は、職場で率直なコミュニケーションを促すのに不可欠なのが「心理的安全性」だと指摘する。米ハーバード大学経営大学院のエイミー・エドモンドソン教授が中心となって提唱している概念で、チームのメンバーが「ここでは懲罰や嘲笑を恐れることなく、安心してリスクを取れる」という意識を共有している状態を指す。2015年に米グーグルが社内で最もパフォーマンスの高いチームの特性を調査し、その筆頭に心理的安全性を挙げたことから、がぜん注目が集まった。

<span class="fontBold">エリン・メイヤー[Erin Meyer]</span><br> INSEAD(インシアード)マネジメント実践教授<br> 大学卒業後、米政府が運営するボランティア組織「平和部隊」の一員としてアフリカで2年間英語を教える。INSEAD客員教授を経て2021年から現職。専門は異文化経営で、企業幹部向けプログラム「国境と文化を超えるリーダーシップ」のディレクターも務める。世界各国の文化を8つの指標で分析する「カルチャー・マップ」で注目を集め、世界で最も影響力のある経営思想家を選ぶ「Thinkers50」に過去2度選出されている。
エリン・メイヤー[Erin Meyer]
INSEAD(インシアード)マネジメント実践教授
大学卒業後、米政府が運営するボランティア組織「平和部隊」の一員としてアフリカで2年間英語を教える。INSEAD客員教授を経て2021年から現職。専門は異文化経営で、企業幹部向けプログラム「国境と文化を超えるリーダーシップ」のディレクターも務める。世界各国の文化を8つの指標で分析する「カルチャー・マップ」で注目を集め、世界で最も影響力のある経営思想家を選ぶ「Thinkers50」に過去2度選出されている。

 「最近は心理的安全性が流行語のようになっているが、そこには大きな誤解があるように思う。『心理的安全性の高い職場=誰にとっても居心地のよい職場』だと思っている人は多いが、エドモンドソン教授が言わんとしていたのは『高いパフォーマンスを目的とする居心地の良さ』、つまり誰もが安心して自分の意見を口に出せる環境をつくるべきだということだ。そのような心理的安全性が欠如していれば、いくら優秀な人材を集めても真価を引き出すことはできない。

 米ネットフリックスではお互いに対して率直なフィードバックを与え合うと聞いて、最初は私も『そんな職場で働くのはごめんだ』と思った。廊下ですれ違う人からいつ攻撃されるかわからないなんて、ぞっとする。だが同社への理解が深まるにつれて、リーダーの人間味や、どうすれば社員がお互いに役立つフィードバックを『親切に』与え合うチームができるかを非常に重視している会社だということがわかってきた」

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