「お客様第一主義」「顧客目線」など、顧客のニーズや感覚を大切にする趣旨の言葉を多くの企業が経営の目標に掲げている。だが、そうした企業はビジネスの結果を左右する顧客の心を見ているのだろうか? 顧客行動の結果でしかない売り上げや利益など財務諸表しか見えていないのでは——。そう問いかける西口一希氏は、P&Gで「パンパース」や「パンテーン」などのブランドを手掛けた後、ロート製薬やロクシタンジャポン、スマートニュースの事業を成長させてきた。さらに、その経験を生かしてM-Forceを共同創業し、多くの企業を支援している。西口氏による本連載では、マーケットを構成する顧客の全体の姿を可視化・定量化し、動態で捉えて事業成長に直結させる「顧客起点の経営」をひもといていく。

 今回は、「9segs」で購買頻度と並んでもうひとつの軸として用いている「次回購買意向(NPI)」について、実例を用いて解説する。

予見されていた「ジムニー」の成長ポテンシャル

 本連載第6回で、顧客を「認知・購買経験・購買頻度」と「次回購買意向(NPI)」の2軸で9つのセグメントに分類する「9segs(セグズ)」を解説しました。次回購買意向は、筆者が前著で発表した指標ですが、筆者が共同創業したM-Forceでは昨年から、この指標の「事業成長のKPI」としての有効性を調査しています。

(第6回引用)なお、次回購買意向は「NPI(Next Purchase Intention)」と名付け、事業成長の重要KPIとして活用しています。NPIは、M-Forceとマクロミルとの共同調査により、事業成長の先行指標として使われてきた認知や好感度といった従来のKPI以上に、マーケットシェア拡大との強い相関を示すことが明らかになっています。

 今回は、NPIが具体的にビジネスの現場でどのように活用できるのかを解説します。一連の分析は、M-Forceでプロダクト開発に携わる竹中野歩ディレクターが担当しました。はじめに、以下の図をご覧ください。

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 こちらは、軽自動車カテゴリーで、計14ブランドを調査した結果です。公表されているデータと、ネットリサーチを通して一般の方から「軽自動車を保有している人」(n=1241)を対象に実施した調査を用いているので、第三者の立場から分析することが可能です。

 縦軸は、2021年1月~6月に取得した売上販売台数の前年比データ。横軸は、2020年12月に取得したNPIを基に算出した「成長ポテンシャル」です。成長ポテンシャルとは、9segsによって得られるKPIの1つで、現在顧客(NPIの有無を問わず、現在のロイヤル顧客+一般顧客)に対する、離反あるいは認知未購買で「次に機会があれば買いたい(=NPIが高い)」とする顧客の割合として導き出しています(※1)。平たくいうと、「顧客化の可能性が高い人がどれくらいいるか?」を示します。円の大きさは、販売台数シェアです。

※1 9segsの(seg5+seg7)/(seg1+seg2+seg3+seg4)の比で得られる。9segsについては本連載第6回の説明を参照。

 この相関を取ると、1つだけ離れた場所にプロットされたブランドがありました(図中、右上の黄緑)。スズキ「ジムニー」です。ジムニーは以前からあるブランドですが、2019年ごろから改めて人気に火が付き、急成長が話題になっています。実際に2021年前半の時点で、2020年に発売された車種を除くと昨年対比の伸びが突出しており、人気が継続しています。

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この記事はシリーズ「「顧客起点の経営改革」~経営に「顧客」を取り戻す」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。