「お客様第一主義」「顧客目線」など顧客のニーズや感覚を大切にする趣旨の言葉を多くの企業が経営の目標に掲げている。だが、そうした企業はビジネスの結果を左右する顧客の心を見ているのだろうか? 顧客行動の結果でしかない売り上げや利益など財務諸表しか見えていないのでは——。そう問いかける西口一希氏は、P&Gで「パンパース」や「パンテーン」などのブランドを手掛けた後、ロート製薬やロクシタンジャポン、スマートニュースの事業を成長させてきた。さらに、その経験を生かしてM-Forceを共同創業し、多くの企業を支援している。西口氏による本連載では、マーケットを構成する顧客の全体の姿を可視化・定量化し、動態で捉えて事業成長に直結させる「顧客起点の経営」を16回にわたりひもといていく。初回は、顧客起点の経営改革の意義と必要性を解説する。

経営を変える3つのフレームワーク
西口と申します。P&Gを筆頭に4社でマーケティングと経営を手掛けた後、顧客起点での経営サポートを行うM-Forceを共同創業し、これまで40社以上の企業の事業支援にコンサルタントや投資家として直接携わっています。
本連載では日経ビジネス電子版の読者の方々に、「顧客起点」の考えに基づいた経営改革を提案します。もちろん、顧客の目線を大切にしていない企業などないでしょう。ですが、顧客を大事にするというスローガンを掲げることと、私が実装を支援している科学的な「顧客起点の経営」は、まったく別物です。事実、厳しい競争環境の中で、「顧客目線で」と言いながらも自らは売り上げ・利益をはじめとする財務諸表とばかり向き合い、数字の推移に頭を抱える経営者と多く出会ってきました。
規模が大きくなり、複数の事業を抱える企業ほど、たった1個の商品購買にどのような顧客の態度変容、ひいては心理の変化があるのか、思いをはせられなくなっていく。経営と顧客、経営と現場が離れてゆき、気づけば予想だにしないカテゴリーから現れた新興企業の新しいプロダクトに、一気に顧客を奪われる……そんな例が、この数年で増加しています。

一方、私が支援している企業では、顧客の状況を時系列で可視化し、顧客起点でビジネスをマネジメントするフレームワーク(問題解決や意思決定をするための考え方)を導入して、経営の健全化が実現しているケースが多くあります。このフレームワークを経営と現場で共有し、持続的成長へとつなげているのです。
フレームワークには、主に「顧客起点の経営改革」「顧客動態(カスタマーダイナミクス)」「顧客戦略(WHO&WHAT)」の3つ(下記参照)があります。本連載ではこれらを軸に、顧客起点の経営改革を解説していきます。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り3226文字 / 全文4652文字
-
【春割】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【春割/2カ月無料】お申し込みで
人気コラム、特集記事…すべて読み放題
ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「「顧客起点の経営改革」~経営に「顧客」を取り戻す」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?