金融緩和の副作用は小さいと話した日本銀行の原田泰審議委員(肩書きは2019年12月5日当時。写真:共同通信)
金融緩和の副作用は小さいと話した日本銀行の原田泰審議委員(肩書きは2019年12月5日当時。写真:共同通信)

 前回は日本銀行によるシミュレーションを検討し、2013年以降の実質金利の低下、円高の修正、そして株価の上昇が実体経済にかなりの好影響を与えた可能性があることを見た。

 このうち実質金利の低下がQQE(量的・質的金融緩和)の効果であることに議論の余地はなく、また為替、株価の動きに対しても、そのどこまでがQQEによるものかはともかくとして、景気刺激的に働いたことは疑いない。

 その結果として総需要が力強く回復し、日本経済がQQE以前の「デフレ期」とは様変わりの成長軌道に乗ったのであれば、リフレ派の描いたシナリオは結果的におおむね達成されたと見ることが可能だろう。

 しかし実際には、日本経済は2013年以降確かに改善したものの、同時に幾つかの「期待外れ」も生じており、力強い回復や様変わりの経済成長が実現したとは言い難い(*1)。その一方で、大規模な量的緩和によって生じる恐れありと指摘されていた様々なリスクやコストについても、これまでのところやはり表面化していない。その意味でQQEは、「微益微害」の政策だったように見える(*2)

 今回は、これらの点についてリフレ派が何を言ってきたか、見ていくことにしよう。

*1 2020年以降は新型コロナの影響でいわば別世界に突入しているので、ここで述べていることは2019年までの日本経済についてである。
*2 「微益微害」という表現は、2000年代のQE(量的緩和)を評して小宮隆太郎(2002)が使ったものである。QEは当時としては大胆な政策だったが、QQEと比べればスケールがずっと小さく、小宮の表現には「この程度の量的緩和にとどまる限り …」というニュアンスがあった。しかし、QQEによって示されたのは、長期金利がマイナスになるほどの規模で量的緩和を行ってもなお「微益微害」の域を出ないということで、これは驚くべき発見である。

幾つかの「期待外れ」

 金融緩和により金利、為替、株価などが動くと、投資、消費、純輸出(輸出-輸入)といった需要項目が刺激され、総需要の増大、生産・所得の増加といった好循環が生じると期待される。しかし、2012年12月に始まり2018年10月(暫定)まで続いたとされる景気拡大局面において、実体経済の改善ペースは著しく緩やかだった(*3)

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この記事はシリーズ「金融政策の混迷――リフレ派は何を訴え、何を残したか」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。