一方、当座預金には付利されていなかったので、所要を越える当座預金は無駄金になる。このため余分な資金は顧客への貸し出し、金融資産の購入、インターバンク市場での貸し出しなどに回り、有効活用が図られることになる。
上に述べたのは個別銀行の対応だが、すべての銀行を合計したとき、所要総額(A)と準備預金総額(B)が異なっていたらどうなるか。もしA>Bならインターバンク金利が高騰し、A<Bならゼロ%に下落する。
その理由は、個別銀行とは異なり、銀行部門全体が所要と準備預金保有額の乖離(かいり)を埋めることは不可能だからである(*注3)。こうした極端な金利の発生を避けるべく、日銀はオペレーションを通じてA = Bとなるように毎月の準備預金供給額を調節し、その過程で市場金利を目標水準に誘導する。
所要と準預の関係についてイメージをつかんでいただくため、ここでその実数の推移を示しておこう。図から明らかな通り、2013年の量的・質的金融緩和(QQE)導入以降、準預は所要をはるかに上回る水準に上昇しており、猛烈な量的緩和が行われたことが分かる。ただ、「準預> 所要」は2013年に始まったわけではなく、リーマン・ショック後、白川総裁の下で事実上のゼロ金利政策が導入された2008年末から既にわずかながら生じ、2013年にかけて徐々に拡大している。つまり、小規模の量的緩和は、QQE導入以前にも行われていたわけである。
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