リフレ政策はミルトン・フリードマンの流れをくみつつも、その背後にある思想とは全く相いれない結末を生んだ(写真:AP/アフロ)
リフレ政策はミルトン・フリードマンの流れをくみつつも、その背後にある思想とは全く相いれない結末を生んだ(写真:AP/アフロ)

 リフレ派が推奨してきた「量的緩和」とは何か、短期金利のコントロールを通じた伝統的な金融政策とどこが違うのか。今回はこの点について、技術的側面にはなるべく立ち入らずに説明する。

金利ベースの金融政策

 中央銀行が金利をコントロールできることは、さしたる説明を要しない。金利には様々な期間があるので、ここではオーバーナイト物(当日借入・翌日返済、以下O/N)がコントロールの対象だとしよう。

 中央銀行が特定の金利水準、例えば5.01%で市中銀行にO/Nでいくらでも貸し出す、そして4.99%でいくらでも借り入れるというシステムを導入すれば、銀行間(インターバンク)貸借市場のO/N金利はこの狭い範囲に必ず収まる(*注1)。このような形で市中金利に事実上の上限と下限を設定する方式は、「コリドー(廊下)システム」と呼ばれる。

*注1 このシステムの下で、5.01%を越える金利でインターバンク借り入れを行う、あるいは4.99%未満の金利でインターバンク貸付を行う銀行は存在しない(代わりに中銀から借り入れる、あるいは中銀に貸し出す方が有利なため)。この結果、4.99―5.01%のレンジ外のインターバンク貸借は成立しえなくなる。

 このシステムの下では、「量」の概念は意味を持たない。市中銀行がどの程度の資金(当座預金)を中銀に置くか、どれくらいの額を5.01%で中銀から借りるか(または4.99%で日銀に貸すか)は、金融政策運営の関心外である。中央銀行の政策判断は、その時々の経済情勢などに照らして、どの水準や幅でコリドーを設定するかという点に絞られる。

準備預金制度で金利をコントロール

 実際に日銀を含む多くの主要国中央銀行が使っていた金利コントロールの手法は、コリドーシステムではなく、準備預金制度に依拠した複雑かつ曖昧なものだった(*注2)。この下では、それぞれの銀行がその業容(顧客からの預金受け入れ額)に応じた額の準備預金を、日銀当座預金の形で積むことが義務付けられている。

*注2 以下で概説する準備預金制度や日銀の金融調節手法の詳細については、翁(1993a)、齊藤他(2010)第14章5-1を参照。

 この額は月ごとに定まり、「所要準備」(厳密には「法定準備預金額」)と呼ばれる。準備預金の月間平均残高が所要を下回るとペナルティーが課されるため、その恐れがある銀行は、顧客への貸し出しの回収、金融資産の売却、インターバンク市場からの借り入れなどによって資金を調達し、所要を満たす当座預金額を確保する。

続きを読む 2/5 マネタリズムとの関係

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この記事はシリーズ「金融政策の混迷――リフレ派は何を訴え、何を残したか」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。