20年以上前から続いてきた「リフレ派」と「反リフレ派」の論争。リフレ派はこの論争において、説得力ある議論や証拠を提示したとは言いがたいが、現実の金融政策に対する彼らの影響力は徐々に増大し、最終的にはインフレーション・ターゲティング(IT)と量的質的金融緩和(QQE)の導入、日銀執行部及び政策委員会への参加によって、全面的な勝利を収めることとなった。
しかし、IT・QQE導入後の推移を見ると、日本経済はリフレ派が描いたシナリオ通りには動いていない。日銀のバランスシートが異様なまでに拡大したにもかかわらず、インフレ目標は導入から8年たっても達成されておらず、経済成長も目に見えて上向いてはいない。「異次元緩和」は形を変えつつ続いているのに、「バズーカ」に譬(たと)えられたこの政策は、いまや国民から忘れられている。これは一体、どういうことなのだろうか?
リフレ派には、大学教授や官庁エコノミストOBが名を連ねている。彼らがノーベル賞経済学者ポール・クルーグマン氏の言う「政策プロモーター」ではなく「学者」であるためには、自らの主張と現実の乖離(かいり)を直視し、その理由を明らかにしようとすべきである。しかし、リフレ派がこうした作業を真摯に、そして誠実に取り組んでいるようには見えない――と本連載の著者である武田真彦氏は喝破する。
日銀、国際通貨基金(IMF)と金融政策・国際金融の現場で活躍し、一橋大学で経済学者として長年教壇に立ってきた武田氏が、今も出口の見えない金融緩和政策とリフレ派のこれまでの「成果」を、批判的に検討していく。