戦いにおいて、最後の決着をつけるために、いかなる決め技を使うのかを、第五巻では見ていく。

 『孫子』が見出した原理原則のまず一つが、「勢い」。

 現代のスポーツでもよく見られるように、勢いに乗ってしまえば、弱小チームが、強大な相手をなぎ倒してしまうという番狂わせさえ起きてしまう。

 味方を勢いに乗せるために、『孫子』は自軍を絶体絶命の窮地に追い落とすことを考えた。「火事場の馬鹿力」「窮鼠(きゅうそ)、猫を噛む」という状態を引き出し、味方を勢いに乗せようというのだ。ただし、勢いには二つ注意点がある。一つは、勢いは長期間続かないこと。だからこそ、短期決戦の場で使う必要がある。また、敵を勢いに乗せないようにし、味方が勢いに乗った所で叩く必要もある。この二つをうまく処理しないと、勢いが落ちた所を、逆に敵に撃破されかねない。

 『孫子』が戦いの決め技として見出した、もう一つの原理原則が「各個撃破(かくこげきは)」。

 これは、相手をなるべく小さく分割し、こちらは一つに集中して、個別には優勢になった自軍で敵を一つずつ潰していくというやり方だ。

 敵を分割させるために、『孫子』は、こちらが身を潜め、どこから現われるかわからないという状況を作ろうとした。

 「各個撃破」の手法は、ナポレオンを始めとする古今の名将はもちろん、現代のテロやゲリラ戦で用いられ、またビジネスの「選択と集中」といった局面などでも幅広く活かされている。

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