
古今東西、戦いや競争においては、主導権を握ることが重視されてきた。『孫子』は、これを
「善く戦う者は人を致(いた)して人に致されず」虚実(きょじつ)篇
と表現している。つまり、相手を意のままに操ることを戦いの基本だと考えていたのだ。
相手を操るための基本原則は二つある。それが「恐怖」と「損得感情」。より具体的にいえば、相手の恐怖心を刺激する急所をつき、利益やエサで相手をつり、不利益や害悪で相手を遠ざける形になる。この「急所」「利」「害」を操縦桿のようにして、相手を動かしていくわけだ。
さらに、この手法をうまく稼動させるために、相手の判断力を奪う道筋も『孫子』は考えていた。
それが、相手を疲弊させ、空腹にさせ、混乱させること。これによって判断力や理性を低下させ、こちらの意のままに動かしやすくしようとしたのだ。
『孫子』はさらに、この原理原則を自分の部下にも向けてみせる。つまり、部下に対しても「急所」「利」「害」という操縦桿を向け、自分の思う通りに操ろうとしたのだ。
しかも、敵の場合と同じように、部下をコントロールしやすくするため、情報を遮断し、混乱させて判断力を奪うことを考えていた。
孫子にとって、将軍とは結局、敵と部下との間に立ち、同じ原理原則で動く操縦桿を使って、両者を操り、味方を勝つように仕向けるような存在だったのだ。
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