野中郁次郎「知識創造理論」に注目

アンダーコロナで先生方が重要だと思う経営理論、経済理論を聞きたいです。

入山氏:これは僕から答えますね。僕が今、一番注目している理論は野中郁次郎先生の「知識創造理論」です。ものすごく大事だと思います。

 野中理論をごく簡単に説明すると「暗黙知の形式知化」です。暗黙知と形式知が相互作用することで組織は新しいナレッジを生み出すという理論ですね。

 なぜこの理論が重要なのか。イノベーションを創出するときには必ず新しい言葉が生まれます。この世にないものを生み出すのだから、新しい言葉も生み出さなくてはいけません。

 ところが、多くの企業、多くのビジネスパーソンは自分が生み出したいこと、自分がやりたいことを形式知化できずにいます。暗黙知を形式化するプロセスを踏んでいないんですね。その結果、企業は前進できず悩んでいます。

 そこで今、流行っているのがデザイン思考なんですよ。多くの大手企業がデザイン思考を取り入れようと苦戦しています。デザイン思考というのは暗黙知を形式化することそのものです。そういう意味でも、僕は野中理論が本当に重要だと思っています。

 これに関連した質問が届いていますね。

野中先生の「SECIモデル」※1は、暗黙知を形式知化して組織に還元する仕組みだと思います。従来のようなSECIモデルは物理的な距離が離れていると機能しにくくなるのではないでしょうか。これについてどうお考えですか。

(※1: SECIモデル:知識創造理論の代表的なフレームワーク。組織内に存在する暗黙知は「共同化=Socialization」、「表出化=Externalization」、「連結化=Combination」、「内面化=Internalization」という4つのプロセスを経ることで共有の形式知となると考える)

入山氏:野中理論では共感性がすごく重要です。言葉になっていない思い(暗黙知)と思い(暗黙知)が共感によってつながるというモデルです。コロナ禍でリモートになった時代に人の暗黙知と暗黙知がぶつかり共感できるのかというと、そこはまだ分からないです。

 僕は野中先生とこの話をさせていただいたこともあるのですが、野中先生は、「やはり物理的な場があったほうがいいはずだ」とおっしゃっています。でも、ある有名な経営者で野中理論を信奉している方は、「意外とネットでもできるんじゃないか」と言っています。まだ我々も分からないんですよ。この辺は本当にフロンティアの研究課題だと思います。

 僕個人は、やっぱり物理的な場がある程度はあったほうがいいんじゃないかと思っています。人間って五感の生き物なので。今日のセミナーもオンラインでの配信ですけれど、こういうデジタルを通したコミュニケーションで感じ取れるのは視覚と聴覚だけですよね。味覚と触覚と嗅覚は感じ取れない。僕はやっぱり場が必要かなと思います。

 すみません、僕の話が長くなりましたが、さっきの質問に戻って、安田くんはアフターコロナの未来に重要な理論は何だと思いますか。

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