ノーベル賞を受賞した学者など“世界の頭脳”の理論を、その要諦を熟知する専門家による解説で学ぶシリーズ。今回は特別企画として、気鋭の人気経営学者と経済学者によるトークセッションをお送りする。

 世界の超一流の経済学者、経営学者17人へのインタビューをまとめた書籍『世界最高峰の経営教室』(日経BP)を題材に、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授と、大阪大学大学院経済学研究科の安田洋祐准教授が、巨匠たちの教えを分かりやすく解説する。

 第2回はウェビナーの前半をテキストで公開する。超一流の経営学者たちはどのように経済学の知見を取り入れたか。ビジネスパーソンが注目する「ダイナミック・ケイパビリティ」とは何か。(ウェビナーのノーカット映像は第1回でご覧いただけます)

入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授(以下、入山氏):「インタビュー映像で読み解く世界の頭脳」、今回は特別企画です。

安田洋祐・大阪大学経済学部准教授(以下、安田氏):今日は僕たち2人がナビゲーター役、MC役ですね。

入山氏:いつもこのウェビナーの司会進行を務めていらっしゃる日経ビジネス副編集長の広野彩子さんが『世界最高峰の経営教室』(日経BP)という本を出版されたということで、その出版記念のトークセッションをお送りします。この本は広野さんが世界の超一流の経済学者や経営学者17人へのインタビューをまとめたもの。世界の頭脳の知見が詰まっています。では早速、広野さんに登場いただきましょう。

広野彩子(日経ビジネス副編集長、以下、広野):はい、今日はよろしくお願いします。

入山氏:広野さん、初めに『世界最高峰の経営教室』について少し説明をお願いします。

広野:この本は『日経ビジネス』誌上で1年半ほど続けていた「世界の最新経営論」という連載をまとめたものです。最先端の研究をしている経済学者、経営学者一人ひとりにインタビューをしています。インタビューの際には必ず「日本についてどう思うか」という質問を投げかけていました。

 そもそも、私がこうした分野に興味を持つようになったのは、米プリンストン大学大学院に留学した際、安田さんと知り合ったことが大きなきっかけです。今、経済学がどんなに面白いかを教えていただき衝撃を受けました。日経ビジネス編集部に戻った後、時々、最先端の経済学や経営学の記事を書くようになり、それが連載につながりました。

入山氏:僕は、この本では解説を書かせていただいています。登場するのはマイケル・ポーター氏、ヘンリー・ミンツバーグ氏、マイケル・クスマノ氏、スーザン・エイシー氏など、本当に経済学・経営学の超トップクラスの方ばかりです。その方たちの目に、日本はどのように映っているのかは大変興味深いテーマだと思います。では早速ですが、クイズに行きましょう。

広野:はい。最初のクイズです。以下に挙げる学者の中で、経済学者ではないのはどなたでしょうか。

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入山氏:これ、僕も答えていいですか。僕ね、本当は質問の「経済学者」っていう言葉の定義をちょっと問いたいところなんですけれどね。でも、「経済学に関わっていない」という意味では僕はCだと思います。デビット・ティース氏。

安田氏:入山さん、Cですか。経営学者のことは分からないので、適当に選んだのですけれど、僕もCにしてよかったような気がします。

入山氏:ティース氏かミンツバーグ氏かどちらかですよ。コトラー氏とポーター氏は経済学に関わっていると思うので。

広野:視聴者の皆さんはコトラー氏という答えが一番多いですね。では正解を発表します。

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 Aのミンツバーグ氏です。

入山氏:えっ、ミンツバーグ? そうなんだ。ポーター氏とコトラー氏はどちらも経済学で博士号を取っていますよね。ということは、ティース氏も経済学博士なんですか。

広野:そうなんです。ティース氏も経済学の博士号を取っていらっしゃいます。ティース氏はもともとノーベル経済学賞を受賞したオリバー・ウィリアムソン氏の弟子でした。ミンツバーグ氏が取っているのは経営学の博士号です。

入山氏:3人は経済学の博士号を取った上で経営学者を名乗っているということですね。今、世界で最も有名な経営学者はポーター氏だと思いますけれど、彼はもともと経済学の産業組織論と呼ばれる分野を専門としていました。ジョー・ベイン氏、リチャード・ケイブス氏らの流れをくみ、経済学のトップジャーナルに論文も載せています。そこから徐々に経営学に転じていきました。

 コトラー氏もマーケティングの世界でおそらく世界一有名な学者ですけれど、実は経済学で博士号を取っています。経営学の権威がもともと経済学の出身というのは、面白いですよね。経済学者の安田君から見てどうですか。

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