<span class="fontBold">「日経ビジネスLIVE」とは</span>: <br />「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト
「日経ビジネスLIVE」とは
「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

 ノーベル賞を受賞した学者など“世界の頭脳”の理論を、その要諦を熟知する専門家による解説で学ぶシリーズ。今回は経営学の巨匠、カナダ・マギル大学デソーテル経営大学院教授のヘンリー・ミンツバーグ氏の言葉から、経営の本質を考察する。

 解説は中央大学国際経営学部特任教授で、ミンツバーグ教授と長年の親交があるダニエル・ヘラー氏。ミンツバーグ教授へのインタビュー映像を使い、クイズを織り交ぜながら、経営学の教祖の思想をビジネスに生かす視座を学ぶ。

 第2回はウェビナーの前半をテキストとクイズ映像で配信する。『MBAが会社を滅ぼす』(日経BP)という著書もあるミンツバーグ教授。MBAは何がダメなのか。欧米企業の良くないところはどこか。

※本シリーズは、2020年11月26日にライブ配信したウェビナーを再編集したものです
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広野彩子(日経ビジネス副編集長、以下、広野):シリーズ「インタビューで読み解く世界の頭脳」、今回は経営学の巨匠、カナダ・マギル大学デソーテル経営大学院のヘンリー・ミンツバーグ教授へのインタビュー映像を使ったセッションをお送りします。

 本日の解説は中央大学国際経営学部特任教授のダニエル・ヘラーさんです。早速ですがヘラーさん、ミンツバーグ教授について、名前は知っていてもどんな業績があるかを知らない方もいらっしゃると思うので、説明していただけますか。

ダニエル・ヘラー中央大学国際経営学部特任教授(以下、ヘラー氏):はい。分かりました。ミンツバーグ氏の偉大さを伝えるとき、引き合いに出すべきはピーター・ドラッカー氏です。日本ではドラッカー氏の著書の愛読者がとても多いですね。話が理解しやすく、実際のビジネスに活用しやすいと好まれています。

<span class="fontBold">ダニエル・ヘラー氏<br> 中央大学国際経営学部特任教授</span><br> 1996年米ウイリアムズ大学卒、2007年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。信州大学経済学部専任講師、東京大学大学院経済学研究科COEプロジェクト特任研究員などを歴任。2005年より横浜国立大学経営学部准教授、2016年より横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授、2020年4月から現職。専門は戦略的提携、自動車産業など。
ダニエル・ヘラー氏
中央大学国際経営学部特任教授

1996年米ウイリアムズ大学卒、2007年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。信州大学経済学部専任講師、東京大学大学院経済学研究科COEプロジェクト特任研究員などを歴任。2005年より横浜国立大学経営学部准教授、2016年より横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授、2020年4月から現職。専門は戦略的提携、自動車産業など。

 そのドラッカー氏の精神を受け継ぐのがミンツバーグ氏です。ミンツバーグ氏の本には、難しい現場や難しい状況の中で使えるヒントがたくさん入っています。ドラッカー氏の30年後に生まれているので、ちょうどドラッカー氏と世代交代するような存在です。

 ミンツバーグ氏は1970年ごろに博士論文を書き、活躍を始めています。この時代は混沌として先が見えず、状況を分析しプランニングするマネジメントの遂行は難しくなっていました。今のコロナ渦と似ているかもしれません。

 その中で、ミンツバーグ氏はマネジメントをするには「内省」「文脈」「分析」「協働」「変革」という5つのマインドセット(視座)が必要だと指摘しました。難しかったマネジメントを分かりやすく説明したのです。

 また、ミンツバーグ氏は1980年代に「創発的戦略」という概念を打ち出しました。戦略論といえば有名なのはマイケル・ポーター氏ですが、ミンツバーグ氏はこの大先生と真正面から戦っています。

 ポーター氏の戦略は分析に基づき良いポジションを獲得してオンリーワンになることを目指します。でも、それはなかなか続くものではありません。最初の1歩でその座を獲得しても、すぐに追いつかれてしまうからです。では次の1歩はどうすればいいでしょうか。

 必要なのは走りながら考えることです。1歩目はきちんと計画したとして、2歩目、3歩目、4歩目は起きる事象にうまく対応し、創発的に出さなくてはなりません。もちろん、分析も必要ですが、それだけでは足りない。動きながら考えるとか、文脈を知るとか、分析以外のマインドを使うことが求められます。

 学問的にも戦略論の第一人者はポーター氏なのか、ミンツバーグ氏なのかという議論が繰り広げられています。

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