広野:オークション理論以外にも経済学において大きな貢献があったと。

坂井氏:そうです。オークション理論を大発展させたのですが、その発展のさせ方によって、経済学にパラダイムチェンジを起こした。それが本当に偉大なところです。

 ノーベル賞の授賞理由の1つは、「パッケージ付き同時競り上げ式オークション」という画期的な新方式を開発したことです。

 あとで詳しく説明しますが、一言で言うと、ミルグロムがつくったのは机といすをうまく売る方式です。机といすを売るのは簡単と思うかもしれませんが、実は難しい。バラバラで売った方がいいのか、セット売りした方がいいのか。机だけほしい人もいすだけほしい人もいるし、セットでなければいらないという人もいます。どうやって売るのが得かは、全く自明ではないんです。売る側としてはできれば両方の可能性を残して売りたい。

 ミルグロムはそういう方式をつくり、実際に電波免許を割り当てる周波数オークションで使われました。周波数には地域や帯域により様々な種類があります。その周波数免許をバラバラに売るか、セット売りにするか、どちらの可能性も残した方式をつくり、実務に使われたのです。これは偉大な貢献です。

 オークションには良いデザインと悪いデザインがあります。良いデザインを知るためには悪いデザインを知ることが大事なので、ここで悪いデザインを1つ皆さんにお見せしたいと思います。

 テレビの免許をオークションするとしましょう。テレビの免許とは、ある特定の周波数の帯域を使うことを許可するもの。テレビ事業を運営するには絶対に免許1つは必要です。でも2つはいりません。

 政府が3つの免許を売り、欲しい人が5人いるとします。皆さんがテレビ局を経営していたら、いくつオークションに参加しますか。1つだけというのはリスキーですよね。その1つを競り落とせなかったらテレビ事業は営めなくなりますから。では3つのオークションに参加しますか。でも3つも免許はいりません。全部勝ったら困ります。

 このオークションデザインだと、1つしかいらないのに3つ競り落としたり、何も手に入らなかったりということが起きます。実際、こういう事態が1990年にニュージーランドで起きています。

シンプルなオークションの仕組みが評価された

広野:そういう悪いデザインが横行していたときに、ミルグロム教授が出てきたのですね。

 ではここで、ミルグロム教授へのインタビュー映像を使って、皆さんにこの話に関係するクイズに答えていただきましょう。ミルグロム教授がオークション理論の研究に関わったきっかけは何でしょうか。クイズの後に続く映像に答えがあります。ご覧ください。

(下のプレーヤーの再生ボタンを押すと、クイズと映像が再生されます)

Q1 ミルグロム教授がオークション理論の研究に関わってきっかけは?
(映像中の写真:林幸一郎)

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