また日本の老舗ホテルの経営が行き詰まって撤退したその跡地に外資系高級ホテルが参入する例も多く、今までよりも多くの職を地域にもたらす場合もある。国の仕事は、撤退や参入を阻止することではなく、むしろ促しながら、その過程で一時的に職を失った人々に対するセーフティーネットを提供することにある。

経済学の考え方を個人レベルに落とし込んでみると…

 さて、バーナード教授らの研究成果を企業や個人のレベルに落とし込んで考えてみると、生産性向上のカギは「成果の小さな仕事から撤退して成果の大きな仕事に資源を再配分する」ことだと言えるだろう。成果の上がらないプロジェクトを深追いしてはいけないのだ。新しく有望なプロジェクトが目の前にありながら、何となくずるずると、成果の上がっていない古いプロジェクトを大量にかかえている、なんてことはないだろうか。

 では、どのようなプロジェクトから手を引くとよいのだろうか。ここでの議論を踏まえると、やはり「国際競争」がキーワードであろう。国際競争の基準と照らし合わせて著しく生産性の低いプロジェクトから優先的に撤退すればよいのである。

 この記事を執筆しながら自分自身について考えてみると、確かに、やめる勇気がなくて撤退できずにいるプロジェクトが多数あることに気が付いた。今まではテコ入れのことばかり考えてきたが、時には撤退も必要ということなのだろう。私は最近流行の「断捨離」に取り組んで色々と私物を処分しているが、結果として「新しいものを買う余地」が部屋にも気持ちにも生まれることに気が付いた。年も明けて心機一転というこの時期に、「新しいことを始める」と誓うのではなく「何か一つ撤退する」と誓うのも面白いのではないだろうか。

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この記事はシリーズ「新しい経済の教科書 Lesson6 マネジメントの経済学」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。