(2012年3月28日の日経ビジネスオンラインに公開した記事を再編集しました。肩書などは掲載当時のものです)

 以前、東北大学の北川章臣教授からご教示いただいたのだが、今昔物語に「御読経の僧が平茸(ひらたけ)にあたる話」というのがある。僧が平茸にあたって亡くなってしまったところ、左大臣が同情して手厚く葬った。それを聞いた他の僧が一生懸命に平茸を食っている。「なぜそんな危ないことをするのか」と聞いてみると、「手厚く葬ってもらいたくて平茸にあたって死のうと思った」という話である。

 何百年も前の書物に、自殺の経済インセンティブ(動機)に関わる記述が残っていることに驚く。この僧に「そんな危ないことはおやめなさい」と言うべきなのだろうか? そうだとすれば、その根拠はどこにあるのだろうか? そして、どうすれば自殺を抑止することができるのだろうか? 今回はこれらの点について考えてみたい。

 言うまでもなく今の日本において自殺は最も深刻な社会問題の1つだ。そこでは、3つの特徴を挙げることができる。

14年間、毎日90人が自殺している国

 第1に、1997年から98年にかけての「急増」、第2に、98年から14年連続で年間の自殺者数が3万人を超えるという「恒常性」、第3に、自殺者の「若年化」だ。警察庁の統計によると、2011年の日本の全自殺者数は3万651人であり、14年間、毎日およそ90人もの人々が自殺していることになる。そうした問題から、2006年に自殺対策基本法が成立し、様々な自殺防止の取り組みが始まった。

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