現在女性管理職比率が18.2%の第一生命保険は、2016年4月までに20%にすることを目指し、女性だけを対象にした管理職養成プログラムを設けた。現在女性管理職比率が12.8%の日本IBMは、2015年までに15%に上昇させることを目指し、係長、課長、部長クラスの階層別に教育プログラムを設け、昇格意識を底上げする努力を始めた。
また現在女性管理職比率が5%のソニーは、2014年度末までに15%に引き上げることを目指し、女性リーダー育成塾を開設し、育成に貢献した上司を評価するシステムを導入した。内閣府男女共同参画局は、今年(2014年)1月31日から上場企業の女性管理職・役員の人数や比率、育児休暇の取得者数等をインターネットで公表し始めたが、30%を超える上場企業が協力している。
男性に広がる「逆差別」の不安
女性幹部5割の実現を目指すオーストラリアや、取締役は男女とも4割以上にするよう大企業に義務付けているノルウェーとはまだまだ比較にならないが、日本の多くの企業が女性管理職を増やすための努力目標を具体的に数値化し、女性のリーダー育成に取り組み始めた。
しかし、その一方で、「女性だからといって能力不足の人を登用するのは本末転倒であり企業にとってマイナスである」「優秀な男性が昇格できない『逆差別』の弊害が生じる恐れがある」という指摘もある。そして、クオータ制や数値目標の前に、女性のリーダーが生まれない根本的な問題をまず解決すべきだという意見もある。
2013年7月5日付のウォール・ストリート・ジャーナルの記事によると、7月2日に東京で開かれた討論会で、米フェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)は「たとえクオータ制が導入されても、ジェンダーに関する根本的な問題に対処しなければ、十分とは言えないだろう」と述べている。
男性と競うと自信を失う
前回の記事で15歳の女子生徒が競争を嫌うことを報告したが、女性が競争を嫌う傾向は、成人を被験者とした実験でも報告されている。米スタンフォード大学のムリエル・ニーデルレ教授と米ピッツバーグ大学のリス・ヴェスターランド教授がピッツバーグ大学の学生を対象にした実験では、前回の記事で紹介した実験と同じように、(1)足し算の正解数による報酬、(2)男女2人ずつの4人のメンバーで足し算の競争をし勝者のみに報酬、(3)正解数による報酬と競争の勝者のみへ報酬のどちらかを選択、の3ラウンドの実験をした。
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