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(2013年10月7日の日経ビジネスオンラインに掲載した連載「最前線!行動する行動経済学」の記事を再編集しました。肩書などは掲載当時のものです)

■お知らせ
ノーベル賞経済学者・リチャードセイラー教授の孫弟子である本稿筆者の田中知美氏が、セイラー教授のインタビュー動画を使って行動経済学を解説するウェビナーを開催します。
開催日:2020年11月19日(木)夜8時~
>>詳細はこちら

 近年、米国や英国をはじめとする先進国で、大学のコースを無償でオンライン上に提供する動きが始まり、eラーニングが大きなブームを迎えている。3大オンライン講座と言われるコーセラ(Coursera)、エデックス(edX)、ユーダシティー(Udacity)の利用者は、それぞれ400万人、100万人、75万人にのぼる。日本でも東京大学と京都大学がそれぞれコーセラとエデックスに参加し講義を無料提供し始めることが決まり、注目されている。

 大学生・成人を対象としたeラーニングが世界的に注目を浴びる一方、日本では、小学生・中学生・高校生を対象としたeラーニング学習塾が急速に発達している。従来の学習塾に比べ、eラーニング学習塾には以下のような利点がある。

課題は、いかに自己管理を促すか

 第1に、それぞれの生徒の理解度にあわせたレベルで学習指導ができるため、理解が遅れている生徒も気後れすることなく学習に取り組める。4年生の生徒が2年生の算数からつまずいていたとしても、従来の集団指導型の塾では、その生徒だけ2年生の教材に戻って指導することは難しかった。

 第2に、学習時間と学習場所に自由度があり、自宅からオンラインの教材にアクセスして学習することができる。したがってやる気のある生徒は自宅での学習時間を増やし、どんどん先に進んでより難しい課題に取り組むことができる。

 第3に、個々の生徒の学習行動や成績のデータがすぐ得られるため、教師はつまずいている生徒に早期に気づくことができ、それらの生徒に対するタイムリーな個別指導が可能となる。第4に、個々の生徒の学習行動や成績のデータを分析することで教材の内容が改良でき、個々の生徒のレベルに教材の難易度を自動調整することも可能である。これら数々の利点がある一方、生徒の自主性にその利用が大きく左右されるeラーニング学習塾は、自己管理が難しい生徒や学習意欲のない生徒に対していかに学習するよう促すかという点で、大きな課題をもつ。

 筆者は、小中高生向けオンライン学習教材「すらら」を運営するすららネットと計量経済学を専門分野とする東京大学の萱場豊氏とともに、生徒の学習行動や成績のデータを分析する「ビッグデータ分析研究プロジェクト」を立ち上げた。すららネットは生徒ごとにカスタマイズされた学習内容を自動的に提供する「アダプティブ・ラーニング」で既に特許を取っている、最先端のオンライン学習教材サービスである。