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(2014年3月25日の日経ビジネスオンラインに掲載した連載「最前線!行動する行動経済学」の記事を再編集しました。肩書などは掲載当時のものです)

■お知らせ
ノーベル賞経済学者・リチャードセイラー教授の孫弟子である本稿筆者の田中知美氏が、セイラー教授のインタビュー動画を使って行動経済学を解説するウェビナーを開催します。
開催日:2020年11月19日(木)夜8時~
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 近年、日本の所得格差は拡大しており、それに伴って子どもたちの教育機会の格差が進行していることが報告されている。一方で、低所得世帯の子供たちに教育機会を提供する動きが活発になっている。低所得世帯の子供たちの学力を上げるためにはどのような政策が効果的だろうか?低所得世帯の生徒たちのテストスコアを向上させるために米国で実施された実験研究を紹介し、日本ではどのような方策が有効であるか考察する。

 2009年度(平成21年度)文部科学白書によると、近年「就学援助」を受ける児童が増加している。就学援助とは、学校に通うために必要な費用の負担が困難と考えられる保護者に対する援助で、生活保護法に規定する要保護者とそれに準ずる程度に困窮していると認められる準要保護者を対象とする。白書によると、就学援助を受けている生徒の割合が高い中学校では学力テストの正解率が低く、また、世帯収入が低い家庭ほど小学生の学力テストの成績が悪いことが報告された。

 以上の結果は、地域間の貧富の差が中学生の学力に影響していること、そして地域だけでなく個々の家庭の経済状況も子供の学力に直接影響していることを示している。東京大学の小林雅之教授らは、親の所得が高校卒業後の進学にも影響することを明らかにしている。

親の所得で進学率に2倍の差

 2012年の調査結果によると、所得が400万円以下の家庭では、子供が国公立大学に進学する割合は7.4%、私立大学に進学する割合は20.2%であるのに対して、所得が1050万円以上の家庭では、子供が国公立大学に進学する割合は20.4%、私立大学に進学する割合は42.5%であった。

 所得が400万円以下の家庭と1050万円以上の家庭では、子供の大学進学率に2倍以上の差があることになる。調査は2006年と2012年に実施されたが、両方の調査において私立大学進学率と所得に強い相関関係があった。国公立大学については、06年の調査では年収と進学率に相関関係がなかったが、12年の調査では強い相関関係が見られるようになった。